mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 7×14×0.2cm
(Total catalogue(Page 2):illustration board 30×42×0.2cm(A3))
2020年
《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》
⑯茜光(Madder red light)
:The SLEEPING GIANT who lights up Lake and Village with GRACEFUL CRYSTAL(湖と村をグレースフルクリスタルで照らす眠れる巨人)
・オリジナル(Original) 2000m
[◯“Height[m]” の色について
(About ◯“Height[m]” color)]
・“縮小投影クローン”比率
(“Reduced projected clone” percentage)
・色の違い(Difference in color)
緑(Green) :オリジナル(Original)
橙(Orange):クローン(Clone)
青(Blue) :ムーに由来(Derived from Mu)
[カタログ全体へのリンク]
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 1
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 2
《このカタログに関連したアートワーク(Artwork related to this catalogue)》
※リンク(Link)
→茜光(Madder red light)
《物語(Story)》
【茜光(Madder red light)】
[山道]
「あの山の向こうに何があるか知っているか?」
「知っているも何も、三日月湖とその向こうに私の育った村、茜光村じゃない」
「普通はそう答えるがな、俺は山並みの中のことを聞いているのさ」
「山並みの中ってどういうこと?」
「それは、この山は丸い縁しか無いのさ、クレーターなのさ」
「そんなこと聞いたことがないわ、村の人達も知らないわ…じゃあ、クレーターの中に何かがあるってこと?」
「ああ、普通は知ることはまず出来ないからな」
「それどういうこと?」
「縁の頂上に到着したら、それは反対側の縁の頂上だからだ」
「よく解らないけど…」
「どうやっているのか解らないが、空間がおかしくなっていて、クレーターの中には絶対に入れないんだ」
「だったら何故、中のことを知っているの?おかしいじゃない」
「登った奴等の話を照らし合わせると中に何かがあると想像がつくし、どうやったか解らないが、山を上から見た絵があるんだ」
「見た?絶対に入れないんでしょ」
「上からはな」
「他から入れるってこと?どこから?」
「まあそう焦るな、これから行くんだから」
「えっ、村へ行くんじゃないの?」
「ああ行くよ、でもその前に、村の名前の由来を知るのも良いだろう」
茜光村は夜明け前のひととき、村全体が茜色に光る。
鮮やかで深い色が、夜明け前の13分のみ光る。そして、明け方の薄暗い景色に戻り、それから夜が明ける。
日暮れ前には茜色にはならず、夜明け前のみ茜色になる。
それは東の山から照らされるからなのだが、その理由は解っていない。
海辺の街で出逢った男が、山は空洞でそこに何かがあるという。
今私達は、森の中の休憩所となっている広場で、山を見上げている。
森の中を通る道は村まで続いており、村人はこの道を通って他の村や街と行き来をするが、この季節はあまり遠出はせず、ここに来るまでまだ誰とも会ってない。
私は西の大陸の大学校へ進学し、4年振りに戻って来た。港で村まで案内して欲しいと男に頼まれ、一緒に旅をしている。
[骨董屋]
或る骨董屋で或る絵に観入っている男が居る。
その男はその絵に描かれている女の腕が紅いことに心を奪われている。身動きせず30分余り観入った後、迷いながらも金を払って、両手を一杯に拡げて絵を持ち、前を見る為に身体を横にして歩いて帰っていった。
[展覧会]
或る展覧会で或る絵に釘付けになっている少女が居る。
その少女はその絵に描かれている湖と村に見覚えがある気がして記憶を辿っている。
その鮮やかな紅い光に照らされた村を見つめ、30分余り考えた挙げ句、何かを思い出したかの様に、眼を大きく見開きにっこりとして絵を眺める。
そして、湖と村に対して余りに大きい女に首を傾げる。
[絵が飾られた邸宅]
或る邸宅で壁に飾られている絵を不審そうに観ている女が居る。
その女はその絵に描かれている山並みとその中に描かれている巨人をまさかと言いたげに口をぱっくりと空けたまま、その家の主人が戻って来るまで30分余りも睨み付けている。
この女は科学者で、自分が扱っている監視衛星による極秘の映像にその絵がそっくりであることに驚きと苛立ちを感じている。
やっと戻って来たその家の主人にソファーに腰掛ける間も無く尋ねる。
「この絵を何処で?」
突然の質問に戸惑いながら主人は答える。
「街の商店街の骨董屋だが」
「どうしてこれを?」
「どうしてって…」
「何か知っているの?」
「何かって…俺はただ…」
「ただ何?」
「ただ、その腕が…」
「紅い腕の巨人を知っているのね?」
「巨人?…巨人なんて知らない、紅い腕の踊り娘は知っているが…」
「踊り娘?…何それ」
「或る街の酒場で踊っていた娘が紅い腕をしていたんだが、それが忘れられなくて…。そしたら、それと同じ紅い腕の絵を見つけたもんだから、どうしても欲しくて買ってしまったんだ」
「踊り娘ね…本当に巨人を知らないの?」
「知らないさ、初めて聞いたよ、何かこの絵と関係があるのかい?」
「いや、知らないならいい」
「ちょっと待ってくれ、いきなり問い詰めて、もういいは無いだろう」
「…そうね…」
「…この絵の通りの巨人が居るのよ…山並みも河も村もこの通り…」
「この通りって、これ幻想画じゃないのか?」
「本物よ」
「そんなこと何で知ってる?」
「仕事で見るからよ」
「君の仕事って…衛星?」
「そう、その衛星で見ているの、これと全く同じ写真を」
「同じ写真って…衛星写真を見て、この絵が描かれたのか?」
「恐らく」
「しかし、本当に居るのか、こんな巨人が?」
「居るわ、他に何体も」
「えっ、何体も?」
「この話は誰にも言っちゃ駄目よ、今までの話もこれからの話も」
「私の仕事は、巨人を見つけ、隠し、監視することなの。世界各地で見つかった巨人は20体を超えているわ。どの巨人も体長は2000m。最初見た時はびっくりしたわ、本当に。でも事実なの。きっとあなたの憧れの踊り娘の腕も巨人の腕から作ったんだわ」
「巨人から?」
「泥棒が居るのよ、Graceful Crystal の」
「Graceful Crystal ?」
「そう呼ばれているわ、魅惑の柔らかい赤いクリスタル」
と、そこへこの家の娘が帰ってきた。
「お帰り」
「あっ、こんにちは」
「お久しぶりね」
「今日はどうしたんですか?」
「ちょっと寄っただけなんだけどね」
「絵が気になっちゃったらしいんだ」
「ああ、その絵?私も展示会で最初に見た時は観入っちゃったわ」
「あなたも?何故?」
「その湖と村に見覚えがあったからよ」
「この湖と村に行ったことでもあるの?」
「ええ、友達の実家があるの」
「でも、そんな大きな人なんて何で描いてあるのかしら?」
「この絵は写生なんだそうだ、本当に巨人が居るそうなんだ」
科学者はちょっと待ったと言いたげに口を挟もうとしたが、仕方がないという感じで諦めた。
「えっ、でも、友達の家からの帰りに山を越えると大草原だったわ」
「ここね」と言いながら、絵の円形の山並みの右側の村とは反対側の左側の草原を指差した。
「じゃあ、やっぱり巨人は想像なんだ」
「違うわ、ここには入れないの、普通は」
「えっ、何それ、どういうこと?」