ーHare's worldー 晴れ(Hare)が紡ぎ出す絵と物語 宇宙の生命、それらが憧れる地球の女神 魅惑の世界が広がる Arts and stories spun by Hare. Lifeform in the universe, the goddess of the earth that they yearn for, the fascinating world spreads

黄金のクリスタル(Golden Crystal)

黄金のクリスタル

acrylic,
canvas 27×22×1.5cm(F3)
2018年



《物語(Story)》

【黄金のクリスタル(Golden Crystal)】

今では殆どの宇宙船は、空間に満ちるエネルギー粒子であるダークマターの引力及び斥力を利用した推進機関によって航行している。
だが、推進以外のエネルギーを必要とするもの、例えば、航行に必要な船内のあらゆる装置、生活の為の機器、そして武器など、それら総てのエネルギーは鉱物から頂いている。
頂いているというのは、彼らは自ら動くことは出来ないが、動物や植物と同様に生きていて、生体エネルギーを持っている。そしてそのエネルギーは強い。動物や植物より強い者もいる程だ。
クリスタル系の鉱物は特に強いエネルギーを持っている。
彼ら鉱物も他の生物同様に個々のエネルギーに差がある。同一の仲間でも個々にエネルギーの強さや陰陽の度合いが異なる。人間とよく似ている。
よってクリスタルは、ダークマター推進球と伴に、宇宙船の二大動力源として必要不可欠なものである。
宇宙船だけでなく、あらゆる星で必要不可欠なエネルギー源である。
最近普及し始めたダークマター推進に対し、昔から当たり前の様に使われているクリスタルは、工場で大量生産されている。鉱物クローンを造ることでエネルギーが同一の規格品が大量に生み出されている。
マイクロ機器に使われる極小のものから、家庭用の一般的なもの、クリスタルガンなどの強力な武器用の小型で重魂仕様のもの、船のキャノン砲用の大型武器用のもの、そして宇宙船用の強力且つ大型なものまで、ありとあらゆる仕様が生まれていた。

当然、私達の船にもクリスタルが乗っている。
しかし最近、調子が悪い。規格通りのエネルギーが出ないのだ。
突然、船の制御に支障をきたしたこともあったし、生活に支障が出たこともあった。
寝てる間に重力装置が機能しておらず、起きた時に皆、部屋に浮かんでしまっていた。スラスター装着の船外ではない為、壁や天井に手足が届く者は蹴ったり掴んだりして何とか自力で床にたどり着いたが、部屋の中央に浮かんでいた者は暫くの間、駆けつけた仲間の笑いの的になってしまった。彼は今でも事ある毎にそのことを愚痴る。

通常なら船の整備時にクリスタルを交換するだけなのだが、私達は今はそうはいかない。
私達は、孤立しているのだ。
私が母星(宇宙連合の中心星)から追放された後、私の仲間達は私を捜し、そして私を見つけ、私達は全員が宇宙連合とは縁の無い存在となってしまったのだ。

今、私達は棄てられたクリスタルの星に船を向かわせていた。昔はこの星もクリスタル採掘が盛んであったが、規格品が充分にある現在は誰も見向きもしない。

私達は密かに期待していた。
そしてそれを捜しに来た。
規格品では絶対に出せない、並外れたエネルギーを持つ天然クリスタルを。どんな重魂も叶わないと云われる、黄金に輝くクリスタルを。
自ら発光する黄金のクリスタルを。

クリスタルの星に到着した私達は、採掘場跡を目指し直ぐ様、降下していった。
降下しながら、船のエネルギー探知機及び、私のエネルギー感知により、黄金のクリスタルが放つ強いエネルギーを捜した。
暫くして、採掘場跡が見えてきた。その時、探知機がそこに強いエネルギー源を探知した。同時に私の感覚も強いエネルギーを感知した。

だが、私達は何も出来ずにいた。
採掘場跡の入口に何か生物が相当な数で群がっているのだ。
私達はエネルギーを絞った船のキャノン砲を彼らに向けて外して撃ってみたが、彼らは少し驚く様子を見せただけで立ち去ろうとはしなかった。それどころか船に向かって十数頭が特攻してきた。一度に体当たりした為、船が微妙に揺れた様だった。
彼らは風船の様な鳥の様な姿をした生物だった。鳥の背部に大きな風船が付いているのだ。その姿に似合わず機敏で速度も速い。
想像するに彼らは、風船の内部の熱交換を敏速に行うことで上下の動きを実現し、両方の翼と尾羽により前方に角度を付けた動きや左右の方向転換が出来るのではないか。

私達はこの星の生物について銀河アーカイブで調べてみた。通常、通信で閲覧するのみの銀河アーカイブであるが(支配種族である七歳の星の種族は思念閲覧可能)、仲間が宇宙連合から出てきた時、不正ダウンロードをして船のデータ庫に保管しておいたのだ。
彼らはクリスタル採掘用に遺伝子操作された鳥であった。縦向きに掘られた採掘場からクリスタルを運搬する為に造られたのだ。

さて、どうすべきか。
私はそう想いながら、彼らに思念を向けて見つめた。その時、1羽の風船鳥(Balloon bird)が私を振り返り見つめた。
私は驚き、そして試してみた。彼に挨拶の思念を送ってみたのだ。
またもや驚くことに彼は、挨拶を返してきた。
“誰だい、あんた達”
彼らは話が出来る知的生命体なのであった。

私達は彼らと交渉をした。
私達の持つ情報を幾つか教える換わりに、私達と一緒に黄金のクリスタルを捜し運び上げることを。
長い間、訪れる者もなく孤立したこの星に暮らしている彼らにとって、外から来た私達の持つ情報はとても興味のあるものなのである。

思念で彼らと話が出来る私が、彼らに乗ることになった。
風船に丸い模様が並んでいる一羽に乗ることになった。彼らは風船の模様が一羽一羽異なっており、この模様で見分けがつく。彼は私の思念に反応した鳥だった。
後頭部の後ろに人間が搭乗する場所が造られており、生物的なキャノピーまであった。
因みに彼らは口の先端から尾羽の先まで12m程もある大きな鳥である。風船は直径6m程もある。

彼らにとってクリスタルは、風船の熱を発生させる為に必要不可欠なものだった。彼らは背部の風船の付け根にクリスタルを埋め込んでいた。
そしてそのエネルギーを受けることで彼ら自身も暖まることが出来る暖房器であった。採掘場跡である家の中にもクリスタルを置物の様にして置き、暖房として使ってもいた。
だが、黄金のクリスタルは、そんな彼らにとってはエネルギーが強すぎて使い道が限られ幾つも置く訳にはいかなかった。
家の中での夜間の灯りとしても使ってはいたが、エネルギーが強い為に遠くの壁面に一つだけ置かれており、家の中を仄かに照らしているだけであった。
だからこそ私達との契約を呑んだのである。

私と私が乗った鳥は、家の中の更に奥に口を開けている採掘場のトンネルに入っていった。
彼の眼は両眼の間にそれらより大きなもう一つの眼がある。それには瞳はなくドーム形状である。暗闇の中でクリスタルの場所を見極める為に追加された、エネルギー観測器官である。我々ヒューマノイドのサードアイというところだ。

暫くトンネルを進み、広い空間に出た。
実は私の目の前の彼の後頭部にエネルギー観測器官で捉えた映像が映し出されているのだが、私はあまりそれを見ていない。真っ暗ではあるが、私には周りの光景が見えている。私のサードアイによって。

空間の中の左手の方へ鳥は迷わず向かっていた。彼は黄金のクリスタルの在処を知っている様だ。
前方に仄かに黄色く光る場所があることに気づいた。それは段々と近づいてきた。

黄金のクリスタルは周囲を照らす程に明るく光っていた。クリスタル内部の中央から黄金色の光が発せられていた。
そして黄金のクリスタルは、ずんぐりとして形の整った姿をしていた。
ここからでも、とても強いエネルギーを感じる。

風船鳥は私に思念を送った。
“これで善いか”
私は思念を送り返した。
“ああ、これがいい”
彼は言う。
“じゃあ、持ち上げる”
そしてクリスタルの上に移動し、両足でクリスタルを掴んだ様だった。
私は彼の胴体の方に振り返りながら、足で掴んだクリスタルを首や下腹部から出ている触手の様なもので器用に絡めていく様子を眺めた。
彼らの身体は正にクリスタル採掘の為に造られたのだ。

私と彼はトンネルを出口に向かって移動し、家に戻っていった。彼の喉元が展開される。どうやらエアブレーキの様だ。そして6本ある脚のクリスタルを掴んでいない後ろの4本で着地した。
私の仲間と他の鳥達が出迎えた。
「これはまた、立派なクリスタルだぁ」とワニ型宇宙種族が言う。
『凄いわねぇ』と女性ヒューマノイドが驚く。
仲間の内、猫型宇宙種族と男性ヒューマノイドの二人は船に待機していた。船へのクリスタル設置とプログラム変更の準備の為である。
鳥達が何かを話している。
“これを持っていくのか”
“まあ、使い途が無かったからいいんじゃない”
“そうだよ、色々情報を教わったしな”
“まあ、そうだな”

私達は鳥達の要望で、簡易情報閲覧装置を置いていくことにし、その中に彼らの欲しがったこの星の外の情報をダウンロードした。そして装置の使い方も教えた。

黄金のクリスタルは、鳥にそのまま船の搬入口まで運んでもらい、浮遊担架の上に置いてもらった。
私とワニ型宇宙種族と女性ヒューマノイドの3人は男性ヒューマノイドのクリスタル設置と猫型宇宙種族のプログラム変更を離れたところから見守った。

鳥達は、私達の船の出発を見送ってくれた。
結構な上空まで一緒に飛んで、皆で船を取り囲んで見送ってくれた。
私には彼らのありがとうという思念が、見送っている間、聞こえていた。
そして船の操縦室のモニターには、空気が薄くなる手前で船から離れ、船が見えなくなるまで見送ってくれている彼らの姿が映し出されていた。

そしてその間も、彼らのありがとうは続いていた。

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