acrylic,
canvas 32×41×2cm(F6)
2018年/add details 2019年
この絵に登場する生命体が描かれた他のアートワーク
Other artwork depicting life forms that appear in this artwork
※リンク(Link)
→灯り亀(Illumination tortoise)
→信頼ー宇宙犬ー(TrustーCosmo dogー)
“Expressive shellfish族(おしゃべり貝族)”が描かれた他のアートワーク
Other artwork depicting “Expressive shellfish tribe”
※リンク(Link)
→Lake Master
→女神の森(The forest of Goddess)
→駆ける想い(Mind of departure)
《物語(Story)》
【白い島(White islet)】
大海原に出て丸一日ほど経ったころ、小さな島が見えてきた。
真っ白な島。
この客船より一回り大きいだけの島である。
砂浜もなく、水面に近づくにつれ緩やかに侵食された様に奥に入り込んでいる。
樹も草も何もなく、動物も居そうにない。
真っ白な岩の塊なのか。
「俺はこの船に何度も乗ってるけど、こんな島は初めてだな。」
隣で見ていた男が呟いた。
「私は東の大陸の港町で会ったことがある。」
後ろの椅子でくつろいでいた紳士が口を開く。
その言葉に違和感を覚え、思わず紳士に質問をしてしまった。
「会ったとは?」
「その男にだ。」
「その男?」
その時、背にしていた海原から声がした。
「久しぶりですね。」
「やあ、元気でしたか。」
紳士が答える。
振り返り、島を見ると、
大きくなっていた。
というか高くなっている。
どんどん高くなっている。
島の上半分が立っているのだ。ちょうど蓋が開くように。
紳士が質問する。
「これから何処まで?」
「西の大陸まで。」
開いた蓋の上の方の一部がまるで唇の様に動いている。
その下の少し左の部分の一筋が開き始めた。
黒いものが現れた。その両脇に白いもの。
眼だ。
蓋に顔が付いている。いや蓋が顔なのだ。
ただ、眼は一つしかなく、顔の右側はない。
「島に顔があるのか?」
「彼は島ではなく、浮いているのですよ。」
紳士が答えた。
今、expressive shellfish(おしゃべり貝族)に乗って西の大陸に向かっている。
特に行く当てが決まっていないと告げると、お願いしてみてはと紳士が提案した。
まさか乗ることが出来るとは。
今では乗り物にしてはなかなか居心地が良いと思っている。
expressive shellfish(おしゃべり貝族)は貝に似た生物の様だ。
彼によると色々な仲間がいるらしい。
彼自身もあまり出逢ったことがないらしいが。