mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 30×21×0.2cm(A4)
2025年
※ラピスラズリは、身に付けた者の視力を良くする効果がある。
肉眼の眼球の奥の部分が奥に引っ張られるエネルギーが増幅されると同時に、サードアイのフォーカスが際立つエネルギーが増幅される。
※鉱物は動物や植物と同じく、それぞれがマインドを持つ生命体である。
※Lapis lazuli improves the vision of the wearer.
The energy of the back part of the eye of the physical eye being pulled backward is amplified, as well as the energy of the third eye’s focus being accentuated.
※Minerals, like animals and plants, are living life forms, each with its own mind.
《物語(Story)》
【青い宝石の様な存在ー蠢くラピスラズリー(The blue jewel-like a beingーThe wriggling Lapis lazuliー)】
ここは暗い部屋。
或る惑星の、或る北の方の大陸の、或る大きな屋敷の、誰の部屋でもない忘れられた小部屋。この小部屋に、或る家具が置かれている。
それは箪笥の様な家具であり、それでいて衣服が入れられたことは一度もなく、それは豪華な大きな小物入れの様でもあり、それでいて住人の大切な物が入れられたことは一度もなく、住人はその用途を知らず、それどころかこの家具の存在さえ殆んどの住人が知らない。
かつての主人が何処からか購入し、この小部屋に仕舞い込んだ家具なのである。他の住人には誰にも知られないうちに運ばれたのである。
或る別の惑星の、或る骨董屋で、かつての主人が見つけた知る人ぞ知る曰く付きの特別な家具。
それは“宝石”とも言われてきた。しかし普通の宝石とは違う。
それは“ラピスラズリ”とも言われてきた。しかし普通のラピスラズリとは違う。
“青い存在が息憑く家具”とも言われてきた。確かにそれは正しい。
一般には知られず、隠される様に一部の者達だけによって伝えられてきた。
家具には五つの引き出しがある。そして引き出しにはシンプルな飾りはあるが取っ手が無いのである。
誰もいない時に家具の引き出しが動き、家具の中に隙間無く密集している何かが動き出す。
家具の外に這い出そうとするその存在は、青い宝石の様な輝きを放ちながら、蠢く。
艶のあるその表面に小部屋の中の僅かな光を反射させながら、まるでヒューマノイドのそれぞれの身体の部位を家具の複数の引き出しから別々に這い出す様に、その存在はそそり出る。
青い宝石の様な存在。
人の形を模した青く艶のある存在。滑らかな光沢を持つ、まるでラピスラズリの様な色合い。
この蠢く青い宝石には多数の眼がある。頭部と想われる部位だけでなく、腕や脚と想われる部位にも胴体と想われる部位にも眼が幾つもある。
普通のラピスラズリを身に付けると、眼球の奥の部分が奥に引っ張られるエネルギーが増幅され、視力が良くなる効果が得られる。肉眼の眼球が引っ張られるだけではなく、サードアイのフォーカスが際立つエネルギーが増幅される。このラピスラズリと眼の関係によるのか、この青い存在には身体中に多数の眼がある。
かつての主人はその光景を隣の部屋から覗き見穴によって毎晩の様に眺めていた。
恍惚な表情を浮かべながらそれを眺める時間が主人の密かな特別な時間となっていた。
そして或る晩、右目を何かに貫かれた姿で隣部屋で亡くなっている主人を掃除の為に隣部屋に入ったメイドが見つけた。
凶器は見つからず、犯人も見つかることはなかった。
覗き見穴の周りには血痕は無かった。その為、その家具が置かれた小部屋は調べられなかった。
何故穴に血痕が無かったかは不明である。
青い宝石の様な存在の身体の一部が針の様に変形し、主人の右目を貫き、主人の右目から抜いた時に覗き見穴の周りに飛び散った血痕を舐め回す様に拭き取って体内に吸収していったという事実を誰も知ることはない。
それから150年が経つ。
その家具は今もこの大きな屋敷の或る小部屋に置かれている。
青い存在もそのままに………。
今でも、一部の特殊な骨董好き達や危ない呪術好き達の間では、噂だけが囁かれていた。
……何処かの惑星の何処かの大きな屋敷の主人が何処かの骨董屋から購入したのを最後に、“青い宝石の様な存在”、“蠢くラピスラズリ”は行方知れずになっているのだと……