mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 14×7×0.2cm
(Total catalogue(Page 1):illustration board 30×42×0.2cm(A3))
2020年
《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》
⑦菊理媛(Kukurihime)
:The TEARFUL GENOCIDER across The Galaxy(銀河を渡りながら涙する殺戮者)
※蛇女(The Snake Lady)
・オリジナル(Original) 2000m
[◯“Height[m]” の色について
(About ◯“Height[m]” color)]
・“縮小投影クローン”比率
(“Reduced projected clone” percentage)
・色の違い(Difference in color)
緑(Green) :オリジナル(Original)
橙(Orange):クローン(Clone)
青(Blue) :ムーに由来(Derived from Mu)
[カタログ全体へのリンク]
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 1
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 2
《このカタログに関連したアートワーク(Artwork related to this catalogue)》
※リンク(Link)
→菊理媛(Kukurihime)
《物語(Story)》
【菊理媛(Kukurihime)】
[殺戮]
見渡す限り、煙の他は何も無くなった。
何だろう、この左頬を伝うものは。
左だけなのは、もう片方の眼は照準器になっているから。
周りは、都市の焼ける臭いと蒸発仕切れなかった残骸が見渡す限り続いている。
もう、こんなことを十回以上も繰り返している。
もう、こんなことは嫌なんじゃないの、と頬を伝うものが告げている。
「来たぞ、東だ。」
旭日に蔽われて直視出来ないが、観測機は太陽と同じ方角に現れていることを告げている。
太陽の光が赤みを帯びている。右の方だけが。
画面に映る対象を意味する点は、秒速1000mでこの都市に向かって近づいている。
近づくにつれ、光の中に、肉眼で人の形が見える様になってきた。
頭が雲に埋もれている様だ。
「何という大きさなんだ。」
「身長2kmと聞いています。」
2000mの大きさのものが歩いている。こちらに向かって。
徐々に人型が鮮明になる。
左腕と左脚だけが紅い、何だ。
「奴はどうやって現れた?」
「200km東の地点に大気圏外から降下してきました。」
「あの生身のままの状態でか?」
「いえ、2つのモノに大気の高温高圧から守られていました。」
「2つのモノ?」
「はい、その2つのモノも人型です。」
「そいつらは大気圏突入時の高温高圧は問題ないと?」
「衛星が撮った映像では、大気圏突入用の人型と思われます。」
「そいつらはどこに?」
「降下地点に留まっています。待機中かと。」
「攻撃した後、奴を宇宙(そら)に戻す為とでもいうのか。」
「そうかも知れません。」
奴は隣の星系の星を滅ぼした後、予測通りここへやって来た。
この銀河の星は既に1/4が攻撃を受け、残りの星達は今や抵抗出来ずに怯えているだけ。
何もせずに滅んでいる訳ではない。可能な限りの武器で抵抗をしているが、まるで歯が立たない。
奴は銀河の中心に向かって移動を続けている。この銀河の星を全て滅ぼそうとでもいう様に。
そして、とうとう我々の星にやって来た。今、目の前にいる。
しかし、武器は何も持っていない。何故だ。
今や肉眼で奴をはっきり見ることが出来る。そして、全ての画面が奴を映し出している。
奴は、左腕を掲げ、腰を下げる。左膝に左肘を乗せる様にし、頭をそちらへ傾ける。
その掲げた腕が光輝く。
「あれが、Graceful crystal」
右の観測官がうっとりと呟く。
そして同時に、全てが紅く包まれた。
[降下]
7000年前は、星の生命を導く導師であった。
操作され生まれた双子の赤玉と青玉は、160もの星に降下し、生命が生まれる兆候が現れると次の者に役目を託し、
次の世界に飛び立っていった。
あの頃は、忘れられない思い出。しかし、今は、種族の尊厳の為、殺戮の導きを行なっている。
毎回、降下している間中、涙を流している殺戮者と呼ばれる彼女を守り、殺戮終了後、宙(そら)へ帰し、
又次の星へ降下させる。
そして、私達も涙を流しながら殺戮者の帰りを待っていた。
3人で泣きながら、宙へ上昇する。
こんなことをもう10回以上も続けている。
彼女も私達も、もう発狂しそうだ…
[蒸発]
彼女は、その銀河の星を滅ぼし続け、とうとう中心に辿り着いた。
17回目の降下を終え、地上に着地し、ダイバ-の保護を解除され、彼女は最後の殺戮に向け、都市へと歩き出した。
しかし、そこに待ち構えていたのは、その銀河の最後の尊厳を賭けた、反撃であった。
銀河の最後の尊厳を賭けた反撃は、その惑星を廻る月を落とすことであった。
月を軌道から外し、姿勢や速度を制御して殺戮者に落下させることであった。
殺戮者を止める為に、この銀河が最後に選択した反撃は、惑星自体も損傷を受け、
自らの惑星の生命も滅びることであった。
左腕を構え、攻撃の態勢に移る。
その時、殺戮者は上空の異変にやっと気付いた。
辺りは急に暗くなり、風が吹き荒れた。
仰ぎ見た殺戮者が上空に見たものは、何かが覆っている光景だった。
そして、その数秒後、圧縮された空気の圧力と熱とに、殺戮者は蒸発を始めた。
しかし殺戮者には、喜びともいえる感情が心から込み上げてきた。
「これで、やっと終わる。」
左目からは涙が流れ、攻撃を仕掛けようとしていた紅く光る腕は、エネルギー波を放出する直前で崩壊し、
そして身体は蒸発していった。
エネルギー波に包まれていた左手の指だけが消滅を間逃れ、5本それぞれが別の方向へ飛ばされた。
殺戮者が蒸発させようとした都市は、月の衝突によってえぐられ、その惑星の半球表面が壊滅、焼失した。
惑星の残りの半球も、数日の内に死の灰に包まれ、惑星は死に絶えた。
そして、この銀河は殺戮者も双子の導師も含め、全ての生命が絶えた。
[発掘]
ある銀河の中心の、太陽が密集した中の、中心の太陽を廻る惑星の湖底で、遺跡が発掘された。
その遺跡は少し変わっていた。
紅く透き通り、輝いていた。
その大きさは、103mあった。
そして、その形は人の指の様であった。
この星は、遠い過去に殺戮者と呼ばれる者と伴に滅んだ星であった。
月によって都市をえぐって出来た窪みが2000年の時を経て、湖になった。
その窪みには、指の1本が埋もれていた。
この銀河の辺境には、他の銀河から渡って来た種族が住み始めていた。
その種族が銀河の中心に旅に出、そして指を見付けた。
この湖には、もう一つ指が埋まっている。
発見された一つは湖底に先端を覗かせていたが、もう一つは湖底50mの処に埋まっている。
このもう一つの指はこの1年後に発見される。
そう先に発見された指に導かれる様に・・・湖底表面に移動してきた。
2つ目を発見したものは、1つ目を発見した者とは別の種族だった。
2つ目の発見後4年が経った時、1つ目の指と2つ目の指は、対面することになった。
3年が経った頃、2つ目の発見が、やっと1つ目を発見した者に伝わった。
それを機に、2つの対面が実現した。
対面式なるものが開催され、2つに被せられた遮蔽シールドが放たれ、2つが対面した。
この2つが対面した瞬間、紅く光り、振動し始めた。
この指は5本の内2本が接近すると紅く光り、振動し、そしてエネルギー波を放出する様になっていた。
この日、この銀河に入植した種族の惑星で、3つの内1つの月が崩壊した。