mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 14×7×0.2cm
(Total catalogue(Page 2):illustration board 30×42×0.2cm(A3))
2020年
《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》
⑲Graceful crystal ♯3ーDetach gem from Gigantic tribeー
:The LEGENDARY CORPSE lying in a Remote Area(僻地に横たわる伝説の亡骸)
※瑞々しい亡骸(Unfading Corpse)
・クローン(Clone) 60m
[◯“Height[m]” の色について
(About ◯“Height[m]” color)]
・“縮小投影クローン”比率
(“Reduced projected clone” percentage)
・色の違い(Difference in color)
緑(Green) :オリジナル(Original)
橙(Orange):クローン(Clone)
青(Blue) :ムーに由来(Derived from Mu)
[カタログ全体へのリンク]
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 1
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 2
《このカタログに関連したアートワーク(Artwork related to this catalogue)》
※リンク(Link)
→Graceful crystal #3ーDetach gem from Gigantic tribeー
→Graceful crystal #1ーDragon wagon stopー
→Graceful crystal #2ーEnchanting giant pinky finger glowing redー
《物語(Story)》
【Graceful crystal #3ーDetach gem from Gigantic tribeー】
森を抜けて、既に3日も歩いている。
今朝辺りから、Graceful crystalが本当に在るなんて嘘なのではないかとの想いが、頭に浮かび始めている。
そんな想いが出てくる度に、絶対に在ると信じる想いがその想いを遠くに追いやる。
大いなる種族の亡骸が、この先に在る筈なのだ。
もう陽が沈み始め、辺りは薄暗くなり始めた。
3日目も何も無かった。
4日目、夜明け前に目が覚めた。
まだ暗いが、支度をして歩き始めた。
昨日から続く、緩やかな丘が連なる地形を歩き続ける。揺れるランタンの光が、地面の大小様々な石の影を踊らせる。
そして暗い前方に目を戻す。
その遥か先の方に、何かぼんやり赤いものがある。
そのまま歩き続けた。そして赤いものがある辺りがうっすらと明らみ始めてきた。夜明けだ。
先程までぼんやりとしていた赤いものが、鮮やかに光を増し始めた。
徐々に赤いものに近づいてきた。
そしてそれが、腕が赤く輝く仰向けになった巨大な人間だと気づいた。
更に近づく。
本当に在った。
これが大いなる種族の亡骸なのだ。腕の向こうの脚も赤く輝いている。
赤く輝く腕と脚の中の骨が影となって浮かび上がっている。それが美しくも想える。そしてまだ生きているのではないかと想ってしまう。
伝説では、左腕と左脚のみが Graceful crystal なのだと伝わっている。その巨大な亡骸が何百年もの間、瑞々しいままで横たわっていると。
今、私の目の前に在るものは、本当に伝説そのままだ…
【Graceful crystal #1ーDragon wagon stopー】
隣の町への旅の途中、大きな袋を背負った旅人に出会った。
隣といっても竜車で3日掛かる距離だ。
その旅人は2日目に竜車に乗って来た。
途中の村の近くに森があり、その森に入る道の入り口の横にある竜車停留所で旅人は竜車を待っていた。
大きな袋は両肩に背負う様になっていて、高さが160cm位はある。
背負って竜車に乗り込むときの格好といったら、袋の上部50cm程が頭の上から飛び出ていて、まるで大砲でも背負っているかの様だ。
そしてとても重そうなのだ。
乗り込んで袋を背から下ろす時、その重さで竜車の床が揺れた程だ。
袋は壁に立てかけず、少し傾いて床に立っている。
旅人は腰のベルトに装着していた斧と刀も床に置き、こちらを見ずにベンチに座った。
竜車に入って来る時から一度も眼を合わせてはいない。
旅人は座ってから直ぐ、眠っているのかずっと眼を閉じている。
袋は車の揺れにも倒れることなく立ったままである。
“袋の中は何なのだろう”。
とその時、竜が吼えた。
その声に旅人が眼を開き、こちらを見た。
「気になるかこれが。」
と旅人が聞いてきた。
何度も袋を眺めていたのを気付かれていたのか。
「見せてやろうか、この指を。」
「指?」
「ああ指だ。」
「ちょっと待ってろ。」と言いながら、袋の上の方にある留め金を外し、かぶせ部分をめくった。
指というものの一部が剥き出しになった。
赤く光っている。
よく見ると、透き通っていて、中心に何かが入っている。
「これが指なのか。」
「ああそうだ。」
「何か石か宝石の様に見えるが。」
「ああ、Graceful crystal だ。」
「Graceful crystal? あの巨人の昔話に出てくる?」
「それだ。」
「昔話だろ。実物だと言うのか?」
旅人は詳しいことは語らなかったが、
先程の森を抜け、更に何日も行った場所に巨人を見つけたらしい。
巨人の小指を斧で切り落としたのだという。
その小指がこの赤く光るものだという。
この地方には巨人の昔話がある。
片側の腕と脚だけが Graceful crystal というもので出来ているという内容だ。
実物があるというのか。それとも騙されているのか。
旅人は、“これ以上は見せられないな”と言い、直ぐに袋に仕舞ってしまったが、
ぼぉーと光る鮮やかな葡萄酒の様な色は今でも鮮明に思い浮かぶ。
旅人とは隣の町で別れたが、その後はすぐ別の街へ向かうらしい。
別れ際に、指をどこかに高く売りつけるのかと聞いてみたが、振り返りもせずに手を振るだけで行ってしまった。
さあ、ここで一泊し、明日は海辺の街に向け出発しよう。
まずは宿でも探すか。
歩きながら頭の中では、旅人が語った話を思い出していた。
”手前にある小指を切り落とすことに決めたんだ。
第2間接のところでな。
斧を振り下ろすと、思ったより刃が簡単に入っていったんだ。
硬くないんだな、これが。
生きてる時は動かなきゃいけないから、そうかもしれないが、死んじまってんだからな硬いかと思ってな。
骨は間接で分断したんだ。
ちゃんと骨もあるんだよ。真っ白なのがな。
大き目の袋を持って来ておいて良かったぜ、ぴったりだったんだ。”
・・・待てよ・・・実物があると知っていて探しにいったのか。何者なんだあの旅の女は・・・
【Graceful crystal #2ーEnchanting giant pinky finger glowing redー】
“Graceful crystal”
あぁ、また見とれてしまう。
先程から何度見ているのだろう。
袋のかぶせを閉じて留め金を留めても、暫くすると、どうしても見たくなってしまう。そしてまた留め金に手が行ってしまうのだ。
赤く輝く Graceful crystal 。
実物がこれほどまでに美しいとは、昔話で語られる内容や伝説で聞いていた以上だ。いや、それを遥かに超える美しさだ。
大いなる種族の亡骸を見つけて、亡骸の小指を切り落とし、袋に詰めて、5日掛けて森まで帰って来た。Graceful crystal は結構重くて、行きに比べて帰りは時間が掛かってしまった。
その間も何度となくその美しい赤い輝きを眺めては、歩き続ける気力を保ってきたのだ。
森の中を通る道を抜けて、今は、森の出口の横にある竜車停留所のベンチに腰掛けて竜車を待っている。
ベンチの左の方に立つ停留所看板の上端の青い玉の下には、竜の顔のマークが描かれていて、ここが竜車の停留所だということを一目瞭然にしている。
停留所の前の道は田舎道には多い土と砂を押し固めた道で、竜車の竜の手足が地面を蹴った跡とその上を踏んでいったワゴンの車輪の跡が残っていて、道の左右ともに遠くまで続いている。道に長く続く車輪の跡は朝に停留所を発車した竜車のものだろう。
今日の空は晴れて澄み渡り、清々しい日だ。停留所の屋根の下のベンチは日陰になっていて時折そよ風も吹いてきて気持ちいい。
この停留所には私一人しかいない。
森に用事のある者はあまりいないのだろう。ましてや、その向こうの荒れ地に行くものなど普通はいないだろう。
だからこそ、何百年もの間、あの大いなる種族の亡骸はひっそりと横たわったままだったのだろう。
昔話には亡骸のことは語り継がれてはいない。生きていた姿が語られているだけだ。
しかしながら、皆が知る昔話とは別に伝説が伝えられていて、そこには亡骸のことが語られている。何百年もの間、亡骸は瑞々しいままで横たわっているという話だ。
その伝説は、実際に亡骸があるこの地域には伝わっていない。この地域の幾つかの町では、伝説のことは誰にも聞いたことがないのだ。
その伝説は、遥か遠くの街でひっそりと語り継がれているに過ぎないのだ。
その街で私は生まれ育ったのだ。
そして私の家系がその伝説を伝えているのである。
皆が知る昔話でも、ひっそりと伝わる伝説でも、この Graceful crystal を持つ大いなる種族の身長は50~60m程なのだ。それは、この大いなる種族がオリジナルの種族ではなく、そのクローンだということを示している。
大いなる種族のオリジナル達は皆、身長2000mなのである。
彼らは大天使とも呼ばれている。
彼らは古参種族であり、その高みの心によって総ての宇宙種族から崇められる存在であるが、今や非常に数が少なく、種族の存続の為に自らをあらゆる形で未来に残そうとしている。その一つの方法がクローンであるのだ。
大いなる種族のクローン達は、身長がオリジナルよりも小さいことが殆どである。そしてその身長はまちまちである。
この大いなる種族は、クローンとして生まれた後に Graceful crystal を着けたのか、それとも最初から Graceful crystal を着けていたのかは不明である。
確かオリジナルの大いなる種族に Graceful crystal を左腕と左脚に持っている存在がいた筈だ。私が見つけたこの昔話や伝説の大いなる種族はその存在のクローンなのかもしれない。
そうなのであれば、私の前にあるこの Graceful crystal は、菊理媛(Kukurihime)と呼ばれる存在の Graceful crystal ということになるのだ。
Graceful crystal自体が価値のあるものなのだか、本当に菊理媛(Kukurihime)の Graceful crystal なのであれば、これはとても価値のあるものになる。値段など付けることも出来ないものになるのだ。それほどまでに価値があることになるのだ。
私は沸き上がるこの上ない驚きと嬉しさと満足さを抑えながら、また袋の留め金に手を伸ばした。そして留め金を外しかぶせをめくって、赤く輝く Graceful crystal を露にした。
それは本当にうっとりするほど美しく、目が離せなくなるのであった。
そして奥にある仄かに白く輝く骨すらも、とても美しく感じるのだった。