acrylic,
canvas 41×32×2cm(F6)
2018年/add details 2019年 and 2022年
《このアートワークに関連したアートワーク(Artwork related to this artwork)》
※リンク(Link)
→Graceful crystal #1ーDragon wagon stopー
→Graceful crystal #2ーEnchanting giant pinky finger glowing redー
→Graceful crystal #3ーDetach gem from Gigantic tribeー
《物語(Story)》
【赤く輝く踊り子(A red shining dancer)】
故郷から遠く離れた街の酒場で、
この街の名物という無花果酒を呑みながら、
他の酒呑みどもを何気なく眺め、今日のことを思い出していた。
店の奥のステージが急に明るくなり、静かに音楽が流れ始めた。
一瞬、店内の話声が止み、そしてそれぞれに歓声を上げながら男たちが一斉にステージを見る。
明かりの中に女がしゃがんでいる。
縹色(はなだいろ)の布をまとい、床に視線を落としている。
音楽が急に激しくなるに伴い照明が強くなり、女が手のひらを外側に向け両腕を上に挙げた。その顔も天井を見上げている。
同時に髪の毛も女の周りに拡がるように持ち上げられた。髪の毛に着けられた小さなフローティングボールが円形に拡がっているのが見える。フローティングボールには槍のようなものが付いている。
上に挙げた右腕・・・
それは、赤かった。
天井から照らされた照明の光の中で赤く滑らかに艶を放ち、そして、仄かに光っていた。
そして右脚も赤く光っていた。
女の踊りは力強く、且つ滑らかだった。
照明に照らされて赤く光る右腕と右脚が、女のミルキーホワイトの肌と相まって、激しくも艶やかに舞う。
印象的な踊りは、男たちの歓声と赤い艶やかな輝きの余韻を残しながら、音楽の終わりとともに訪れた暗闇の中でも、私の眼と心に赤い残像を残しているほど美しかった。
円形のステージは洞窟を模してあった。ステージを囲う壁は岩に見える様に造られていた。その左側に化粧部屋へ向かう通路があり、それも洞窟になっていた。
赤く光る女は歓声と共に洞窟の通路から退場していった。
私はバーテンダーに、どうしても彼女と話をしたいことを告げ多めのチップを渡した。
バーテンダーは“彼女が了承すればの話だがな”と言いながら店の奥へ入っていった。
「何、Graceful crystal って?」
「何って・・その手と足」
「ああっ、これ」
と言いながら、右手と右足とが覗く様、身にまとったものをめくった。彼女は今はローブを身に付けている。
手も足も見えている部分は全て赤い。
「Graceful crystal って言うの?これ」
「そう多分」
「多分って?」
「一度だけ見たことがあるから」
「でも、どうしたんだい、これ、どうやって・・」
「何となく欲しくて」
「何となくで手に入るの?」
「うん・・でも、この大陸で私だけだと思うけど・・」
と恥ずかしそうな表情と嬉しそうな表情が彼女の綺麗な顔に混じった。
「運良く着けてもらったの」
と、私に良く視える様に腕を差し出した。
骨が中に見える。あの時と同じだ。
私は目を彼女の右手の指先に向ける。
そこにも骨が見える。
「骨は元々の私のものなの」
私が骨に見入っているのに彼女は気付いていたらしい。
何故か次の街への旅は、この女と一緒にすることになった。
あの仄かな赤光、惹かれてしまう・・・。
明日またあれが見られる・・あの艶を。
私は興奮した心に寝付けるのか心配になったが、暫くすると疲れた身体に眠気が襲い、Graceful crystalを想いながら眠りに落ちていった。
その美しい艶を想いながら・・・