mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 18×26×0.1cm(B5)
2024年
《この構造説明図に関連したアートワーク(Artwork related to this structural drawing)》
※リンク(Link)
→瞑想に浸る大天使ー水に満ちた惑星の巨大滝ー(The Meditating ArchangelーGiant waterfall on a water-filled planetー)
《大天使を描いたアートワーク(Artwork depicting archangels)》
→カテゴリー【大いなる種族ー大天使ー】(Category【The gigantic tribeーArchangelー】)
《物語(Story)》
【瞑想に浸る大天使ー水に満ちた惑星の巨大滝ー(The Meditating ArchangelーGiant waterfall on a water-filled planetー)】
その惑星は総てが青かった。
所々に薄明るい青が散在したが、全体的には深い青だった。
総てが海だった。
散在する薄明るい青い場所は、浅い水に浸かった大陸や島だった。
浅いと言っても大陸や島の水深は数十mから数百mあった。
そしてそれ以外の深い青は水深数千mから数万mあり、十万mを超える場所もあった。
それらの大陸や島は常に水に浸かっている為、厳密には大陸とも島とも呼べない状態だったが、この総てが海に覆われた惑星においてはそれらを敢えて大陸や島と呼んでいた。
その水に満ちた惑星においては、大陸さえも水を通してしか見ることは出来ず、深い青の海に散在する薄明かるい青として存在している。
その惑星の表面の総てが水に満ちているのだった。
その比較的大きな大陸の西の端に高さ10000mを超える崖が存在した。長さは300kmを超えていた。
当然のことながら、その大陸自体も全体が水に浸かっていた。
その付近の風の流れ、海水温による対流、惑星の自転による海水の流れ、衛星との潮汐力等により、その大陸の西端の海水は大陸から外側へ離れるように流れていた。
その海流は激しく、崖付近の大陸の海水を常に海側に流そうとしていた。
その為、その大陸を覆う崖付近の水は常にその崖に流れ込んでいた。
そしてその大量の水は巨大な崖を落ちる巨大な滝と成っていた。
それは、高さ10000m、長さ300kmの巨大な滝であった。
総てが水に満ちた惑星の中で珍しく縦方向に移動する水を見ることができる場所であった。
勿論、海中で縦方向に流れる海流は至るところに存在するが、大気に触れる形で縦方向に流れる水はこの巨大な滝が唯一のものだった。
そしてその巨大な滝の中央付近に奇妙な場所があった。
それは流れ落ちる大量の水の中で不自然に存在する円であった。
まるで流れ落ちる滝をそこだけ正確な円形に切り取ったように見える。
落ち続ける大量の水がその円に当たって跳ねることもなく、その円に遮られて左右に押し分けられることもなく、流れ落ちる大量の水の途中に只すっぽりと正確に円形の穴が空いているのである。
そしてその円形の穴は直径が1500m程もあった。
高さ10000m、長さ300kmの巨大な滝の中央に存在する直径1500mの正確な円形のなのである。
そしてその円形の穴の中には人がいた。
巨大な人が円形の穴を塞ぐように身体の左側を外に向けて座っていた。
その人は女性のようだった。
そしてその女性の身長は2000mもあった。
彼女は“大天使”だった。
彼女は、存在する個体数が少なくなった“大いなる種族”と呼ばれる古参種族の末裔の一人であった。
彼女らは宇宙種族達に崇められており、“大天使”とも呼ばれていた。
彼女は目を瞑っていた。
身動きひとつしていなかった。
彼女は瞑想をしていた。
もう既に200年もそうやって瞑想をしていた。
この水に満ちた惑星は海流が穏やかな地域もあるが、多くの地域が常に大洪水と言ってよい状態であり、特にこの巨大滝の地域は物凄い轟音に包まれて大量の水が落ち続けている壮大で過酷な地域である。
彼女はこの轟音と水量の中で、この惑星における200年以上もの間、瞑想し続け、内なる世界に入り込んでいるのである。
彼女はこの巨大な滝の轟音を求めてこの惑星にやってきた。
巨大な滝の中央にやってきた彼女は、フィールドジェネレータで自身の周りに球形の停滞フィールドを展開したのだ。
そして流れ落ちる大量の水の中に停滞フィールドを突っ込ませた。
停滞フィールド内の空間は周りの空間に対してその空間が無いものと見なされる。
流れ落ちる大量の水は、その球形の停滞フィールドを何も無いかの如く振る舞う。
球の上側の面に触れた水は、見た目には消えた後、球の下側の面から現れて周りの水と同様に落ちていった。
流れ落ちる大量の水は、停滞フィールドに跳ね返ることもなく、遮られることもなく、まるで球形の停滞フィールドなど無いかのように落ちていった。
真空中での速度が一定である光や電磁波等の量子は停滞フィールド内の空間を認識できる為、視覚的には滝の中の停滞フィールドの球形やその中の物質は視認できるのである。
停滞フィールドとは、光や電磁波等の量子には感知できるが、物質には感知できないものなのだ。
停滞フィールド内のものは物質による物理的な干渉を受けないということになる。
それは停滞フィールド及びその中に居る者は如何なる物質も通り抜けられることを意味する。
そしてそれは何者からも物質による物理的な攻撃を受けないことを意味するのである。
停滞フィールド内の空間と通常の空間とは別の振動数を持ち、同一空間に存在していても互いに干渉しないのだ。
彼女の同族である大天使又は宇宙の支配種族である七歳の星の種族だけが持つ強い超能力による量子干渉以外には彼女の瞑想は邪魔されないということなのだ。
彼女は停滞フィールドを滝の中に突っ込ませて、滝周りの空気に反響する轟音を聴きながらも滝の水に包まれる感覚を得られるように、滝の表面に停滞フィールドの球の直径部分が丁度来るように停滞フィールドの半分を滝の中に入れて、空間相対ロックを作動させ停滞フィールドを固定した。
そして視覚的優先順位を停滞フィールド内とし、停滞フィールドと同一空間に存在するが振動数が異なる為に感知できなくなっている滝の水を見えなくして、停滞フィールドを形作っている量子光を優先とした。
停滞フィールドの球の内表面の半分には、落ちてきて停滞フィールドの球の上面に触れる瞬間の滝の水や、下面から落ちていく瞬間の滝の水が、量子光の輝きの中で模様を描いている。
大量の水が流れ落ちる壮大な光景と轟音と量子光に包まれて、彼女は瞑想に入っていった。
古参種族である大いなる種族(大天使)達は個体数が少なくなり、自分達の存在意義を各個体がそれぞれに見出だそうとしながら永い時を生き続けてきた。
やるべきことを見つけ、それを実践している者も多くいた。
しかしながら、この個体のように永い間それを見つけようとしている者もいた。
彼女は自らの心に深く入り込み、自分の心の中を旅していた。
何もかも掻き消す轟音を求め、その轟音の中で瞑想に入った彼女は、もはや轟音も届かない程の深い永い旅に浸っていた。
自らの存在の意味を見つめる旅。
いつか旅から帰還するのだろう。
それはもう直ぐかもしれない。
永い永い遥か未来かもしれない。
何かを見つけた時、彼女は旅から帰還するだろう。
大天使の願い、大いなる種族の願い、美しかった宇宙を取り戻すという宇宙全体の願いを未来に繋げる為に。
落ちていく大量の水に反射する陽光が、停滞フィールドの中の彼女の両腕と両脚のグレースフルクリスタルを輝かせる。
流れ落ちる荘厳な巨大な白壁に、留まり続ける紅く柔らかいクリスタルの光。
それは、そこだけ時が止まったかのように妖しくも美しく輝き続けている。