acrylic,
canvas 41×32×2cm(F6)
2018年
《物語(Story)》
【周遊宿ー角の塔ー(Cruise lodgeーThe horn towersー)】
昨日チェックインした宿は、一度は泊まってみたかった、この地方の名物だ。
昼間のゆったりとした揺れさえ我慢すれば、結構快適である。
夜は泊まり客と同様に宿自体も眠る為、揺れることはない。たまに突然、身動きすることがあるが、それも名物の一つである。
宿となっているこの動物の体長は、200mはあろうかという巨体。宿部屋となっている肩に聳える塔の様な角は高さが80mはあるとのこと。この角の内部を加工して部屋を造ってある。
頭に聳えるもう一つの鋭い角は、肩のものより太さは少し細いが、長さは更に長い様に見える。
この頭の角には、この宿の経営者がおり、彼や従業員の住居や仕事部屋、水や食料の倉庫、宿の備品庫などがあるらしい。
彼は昼間は、動物の巨体の進行方向を見定める為、前方が良く見える仕事部屋に常駐している。
私は、昨日まで滞在していた街でこの宿にチェックインした。
次の街までの移動手段と昨晩の宿を兼ねてのことである。
まあ、それよりも、この地方に来たら、この宿に一度は泊まってみたかったのだ。
こんな高い場所からの昼間の移動する光景も、夜の満天の星が輝く中でぼぉっと輝く角のパッチワークの様な窓の灯りや、遠くに微かに煌めく街の明かりも。
どれもが想像を越えた体験である。