mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 26×18×0.1cm(B5)
2022年
このアートワークに関連したアートワーク
Artwork related to this artwork
※リンク(Link)
→Graceful crystal #1ーDragon wagon stopー
→Graceful crystal #3ーDetach gem from Gigantic tribeー
→《ディテールアップバージョン(Version of add details)》 赤く輝く踊り子(A red shining dancer)
※リンク(Link)
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 2
→《大いなる種族(大天使)カタログ(The Gigantic Tribe(ARCHANGEL) CATALOGUE)》Page 1
《物語(Story)》
【Graceful crystal #2ーEnchanting giant pinky finger glowing redー】
“Graceful crystal”
あぁ、また見とれてしまう。
先程から何度見ているのだろう。
袋のかぶせを閉じて留め金を留めても、暫くすると、どうしても見たくなってしまう。そしてまた留め金に手が行ってしまうのだ。
赤く輝く Graceful crystal 。
実物がこれほどまでに美しいとは、昔話で語られる内容や伝説で聞いていた以上だ。いや、それを遥かに超える美しさだ。
大いなる種族の亡骸を見つけて、亡骸の小指を切り落とし、袋に詰めて、5日掛けて森まで帰って来た。Graceful crystal は結構重くて、行きに比べて帰りは時間が掛かってしまった。
その間も何度となくその美しい赤い輝きを眺めては、歩き続ける気力を保ってきたのだ。
森の中を通る道を抜けて、今は、森の出口の横にある竜車停留所のベンチに腰掛けて竜車を待っている。
ベンチの左の方に立つ停留所看板の上端の青い玉の下には、竜の顔のマークが描かれていて、ここが竜車の停留所だということを一目瞭然にしている。
停留所の前の道は田舎道には多い土と砂を押し固めた道で、竜車の竜の手足が地面を蹴った跡とその上を踏んでいったワゴンの車輪の跡が残っていて、道の左右ともに遠くまで続いている。道に長く続く車輪の跡は朝に停留所を発車した竜車のものだろう。
今日の空は晴れて澄み渡り、清々しい日だ。停留所の屋根の下のベンチは日陰になっていて時折そよ風も吹いてきて気持ちいい。
この停留所には私一人しかいない。
森に用事のある者はあまりいないのだろう。ましてや、その向こうの荒れ地に行くものなど普通はいないだろう。
だからこそ、何百年もの間、あの大いなる種族の亡骸はひっそりと横たわったままだったのだろう。
昔話には亡骸のことは語り継がれてはいない。生きていた姿が語られているだけだ。
しかしながら、皆が知る昔話とは別に伝説が伝えられていて、そこには亡骸のことが語られている。何百年もの間、亡骸は瑞々しいままで横たわっているという話だ。
その伝説は、実際に亡骸があるこの地域には伝わっていない。この地域の幾つかの町では、伝説のことは誰にも聞いたことがないのだ。
その伝説は、遥か遠くの街でひっそりと語り継がれているに過ぎないのだ。
その街で私は生まれ育ったのだ。
そして私の家系がその伝説を伝えているのである。
皆が知る昔話でも、ひっそりと伝わる伝説でも、この Graceful crystal を持つ大いなる種族の身長は50~60m程なのだ。それは、この大いなる種族がオリジナルの種族ではなく、そのクローンだということを示している。
大いなる種族のオリジナル達は皆、身長2000mなのである。
彼らは大天使とも呼ばれている。
彼らは古参種族であり、その高みの心によって総ての宇宙種族から崇められる存在であるが、今や非常に数が少なく、種族の存続の為に自らをあらゆる形で未来に残そうとしている。その一つの方法がクローンであるのだ。
大いなる種族のクローン達は、身長がオリジナルよりも小さいことが殆どである。そしてその身長はまちまちである。
この大いなる種族は、クローンとして生まれた後に Graceful crystal を着けたのか、それとも最初から Graceful crystal を着けていたのかは不明である。
確かオリジナルの大いなる種族に Graceful crystal を左腕と左脚に持っている存在がいた筈だ。私が見つけたこの昔話や伝説の大いなる種族はその存在のクローンなのかもしれない。
そうなのであれば、私の前にあるこの Graceful crystal は、菊理媛(Kukurihime)と呼ばれる存在の Graceful crystal ということになるのだ。
Graceful crystal自体が価値のあるものなのだか、本当に菊理媛(Kukurihime)の Graceful crystal なのであれば、これはとても価値のあるものになる。値段など付けることも出来ないものになるのだ。それほどまでに価値があることになるのだ。
私は沸き上がるこの上ない驚きと嬉しさと満足さを抑えながら、また袋の留め金に手を伸ばした。そして留め金を外しかぶせをめくって、赤く輝く Graceful crystal を露にした。
それは本当にうっとりするほど美しく、目が離せなくなるのであった。
そして奥にある仄かに白く輝く骨すらも、とても美しく感じるのだった。