mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 26×18×0.2cm(B5)
2023年
このアートワークに関連したアートワーク
Artwork related to this artwork
※リンク(Link)
→アンブレラ ガールー12歳の想い出ー(Umbrella girlーRemember when I was 12ー)
《物語(Story)》
【ルーフ レディー紫外線遮蔽光システムー(Roof ladyーUltra-violet rays shielding light systemー)】
私の上にはいつも屋根がある。
家に居るときは、それは誰もが当然のことなのだか、私の場合は外出するときも私の上にはいつも屋根がある。
私は生まれつき肌が弱く、日光に、特に紫外線に弱いんだ。
私の上にはいつも170cm四方の屋根がある。
見た目にも本当に屋根のようなんだ。
屋根の縁からは全周に渡って光学的な紫外線遮蔽膜が地面に向かって放たれていて、側面からの紫外線や、地面から反射する紫外線をも防いでる。
私はこの屋根のお陰で不自由無く外出出来るんだ。
近所の顔見知りの人達は私のことを名前で呼ぶんだけど、この街の親しくない人達の殆どは、私のことを “ルーフレディ” と呼ぶんだ。勿論、面と向かってそのまま呼ぶ人は余り居ないが、たまに私を馬鹿にしてそう呼ぶ人もいるんだ。
まあ、もう慣れっこだから聞き流しているけどね。
そうそう、この屋根は私の上に浮いているんだ。
ダークマター推進球というのとダークマター推進プレートというものが屋根の中に入っていて浮かんだり姿勢を変えたり出来るんだ。何でもダークマターという空間に折り込まれた次元の根元エネルギーが引力斥力を誘発するものらしく、そのエネルギーを操作するのがダークマター推進球とダークマター推進プレートらしくて、私の上50cmのところに浮かぶように設定してあるらしい。
それにこの屋根は私の生命エネルギーを感知して作動していて、私の上からは離れないようになってる。
離れちゃったら私は大変なことになっちゃうからね。
また、私の思念で色々コントロールも出来るんだ。
例えば、エアコンも付いていて温度調整もしてくれるんだ。今日は少し寒いからちょっとだけ暖房が入ってる。私の思念を勝手に読み取って丁度いい暖房を入れてくれてるんだけどね。
あっ、因みに今日着けてる冠や腰飾りにもダークマター推進球が付いていて、私の頭や腰から離れないように浮かんでいるんだ。
こういうのは他の人も愛用してたりするよね。
今はお祖母ちゃんの家を訪ねるところなんだけど、いつも家族と一緒が多いんだけど、今日は私一人で来て欲しいって言われてる。
どうしたんだろうね、何か特別な話があるのかな。
私、お祖母ちゃんが大好きだから、まあ何でもいいんだけどね。
早くお祖母ちゃんの顔が見たいなあ。
家に近づくにつれて早足になっちゃってるんだよね。
今日の衣装はスカートが余り広がらないから、凄く急いでるように見えちゃうだろうな。
もう少しゆっくりと歩こうかな。
そうでなくてもこの屋根目立つんだから。
あっ、知り合いと目が合った。
しとやかに、にっこり会釈だぞ。
ほら、彼女も笑顔で会釈した。
この街で私は品のあるお嬢様で通ってるんだから、自分の佇まいには気を付けないとね。
あの角を曲がれば、もう直ぐお祖母ちゃん家だ。
お祖母ちゃんのいれるお茶はとても美味しいんだ。
お茶を飲みながらゆったりと色んな話をするのが心地いいんだよね。
あっ、屋根の暖房の風量が少しだけ増えた。温度を少し上げたかな。大通りの角を曲がって道が陰になったからだね。
この屋根は、私の思念だけでなく、周りの環境も常に把握をしてくれているんだ。
本当、凄いんだ。
もし誰かに襲われたりしても、屋根が私を護るようになってるらしい。まだそういう事態になったことはないんだけれどね。
今日一人で外出することを許されたのも、それがあるからなんだ。父なんて、いつもはお手伝いさんに任せているのに、今日は自分で念入りに屋根の具合を確認していたからね。
まあ愛されてる証拠だから嬉しいんだけれどね。
さあ、お祖母ちゃん家に着いた。門の呼び鈴を鳴らそう。
門から玄関までは回廊が続いている。
玄関でお祖母ちゃんが笑って待っている。
私は早足で玄関に急ぐ。
お祖母ちゃんに挨拶して抱き合う。同時に屋根は邪魔にならないように後ろへ少し移動して、背中を護るような角度になった。
玄関の扉を開けたお祖母ちゃんに促され玄関に入る。
日光が入らない場所に入った私を見守りながら、屋根は紫外線遮蔽膜と暖房を消し、そして縦向きになり一緒に玄関に入った。
私はお祖母ちゃんの後ろに付いて家の奥に入っていく。
屋根は玄関の側面の壁の方に移動し、その壁に自らを立て掛けるように、床に降りて壁にもたれ掛かった。
私は、“また帰りも宜しくね” と心の中で想いながら、大好きなお祖母ちゃんの後ろ姿を見ながら付いていく。
早くお茶を飲みながら話をしたいなと、笑顔になりながら。
《このアートワークについて(Regarding this artwork)》
2022年11月に他のアートワーク(※1)を描いている時、頭上に屋根を浮かべた女性の光景を心に映された。
年末からその女性のアートワークを描き始めた。
描き始めると彼女の想いが私の心に流れ始めた。
それを書き留めるように上記の物語を書き始めた。
書き始めると、彼女の想いは次々と私の心に流れてきた。
それを私は書き留めていった。
それはお祖母ちゃんのことが大好きな彼女の心だった。
そして書き終わり、私の心も暖かくなっていた。
(※1:【Graceful crystal #2ーEnchanting giant pinky finger glowing redー】だったと想う)