ーHare's worldー 晴れ(Hare)が紡ぎ出す絵と物語 宇宙の生命、それらが憧れる地球の女神 魅惑の世界が広がる Arts and stories spun by Hare. Lifeform in the universe, the goddess of the earth that they yearn for, the fascinating world spreads

カタログー大天使達を管理する部屋ー(The CatalogueーThe Room to manage Archangelsー)

カタログー大天使達を管理する部屋ー

mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 15×21×0.1cm (B5)
2023年



このアートワークに関連したアートワーク
Artwork related to this artwork

※リンク(Link)
“大天使達を管理する部屋”の全景(Overall view of “The Room to manage Archangels”ー)

管理者ー大天使管理室ー(The ManagerーThe Archangels Management Roomー)

管理者を護る巨大構造物(Huge structure to protect The Manager)


同シリーズのアートワーク(Artwork of the same series)

ノワールとの旅―地球人とネコ型宇宙種族の大冒険―(The journey with Noir―The great adventure of A earthling and A cat-type-cosmic-race―)


《物語(Story)》

【カタログー大天使達を管理する部屋ー(The CatalogueーThe Room to manage Archangelsー)】

洞窟の先の方を照らしている明かりが急に、今までとは違って照らし返す様になった。
洞窟の先の方の表面が光を反射し、上下左右というか洞窟の円形の壁を照らし合っていて、先の方のみ洞窟全体が浮かび上がっている。
私とノワールは洞窟を進む。
今歩いている足元はただの洞窟の壁だが、前方は表面がガラスの様なものになっているようだ。
私達はそのまま先に進む。

ここからは洞窟の上下左右総ての表面がガラスのような透明なもので覆われていて、正確な円筒形になっている。そして床部分だけは平面になっている。
床の透明の部分に恐る恐る足を乗せる。
割れるかもしれないと思いながら床を良く見ると、透明な下には洞窟の岩があるのが見える。下の岩が透明の床に映っていないのを考えると、凹凸のある岩の上に透明な板を置いている訳ではなく、岩に液状の樹脂でも流して固めたかの様に岩と隙間が無い状態になっている様だ。
靴の裏に付いた砂や砂利が床と擦れてカチカチと鳴っている。

透明の床を20m程進んだ頃、壁面の反射光とは違う明かりが前方にあることに気が付いた。反射光の青白さより青さが増した光がそこに見える。どうやら出口がある様だ。今いる所から更に20m程先のようだ。

出口に近づいて来た。もうあと数mだ。
その時、出口の向こうの青い光の中に何やら“横を向いた人?”の様なものが横切った。
「なに、今の?」
動くものがいるのかと驚きながら暫く立ち止まり、やはり進もうと想い出口へ向かった。

出口の先にも透明の床だけは続いていた。
でも透明の床は5m程しかない。
そして周りには、大きな青い空間があった。
何なのか此処は。
空間の中には何やら板状のものがたくさん浮かんでいる。何十枚もある。いや、百枚以上ありそうだ。
そしてその板状のものには何か模様が描かれている。

青い空間に飛び出した透明の床の両側に何か丸い物が幾つか置かれている。いや、置かれているというより浮かんでいるようだ。
近づいてよく見てみると、直径50~60cm程で真ん中に穴が開いたリング状の物が6つある。少し歪んで四角形っぽい。

ノワールが言う。
『コレタブン、ウキワダトオモイマス』
「えっ、浮き輪なの、これ」
「じゃあ乗ってみましょうよ」

浮き輪は透明の床から横に突き出した透明板にそれぞれ固定されている。
私とノワールは透明板の上に乗り、浮き輪の穴に片足を入れようとしながら身体の重心を浮き輪の方にかけた。
「うわっ、身体が浮いちゃう」
今まで普通にあった重力が突然に無くなった。
すると、浮き輪が穴が大きくなるように浮き輪自体が広がり、勝手に浮き輪が腹の辺りまで移動してきて、身体に合うように浮き輪の調整部が縮まって、浮き輪の穴のサイズが身体にぴったりになった。
思わずノワールの方を見た。
ノワールも私を見ている。
私もノワールもぴったりサイズの浮き輪で空中に浮いていた。

透明の床や透明板にはそれまでの洞窟と同じように普通にこの星の重力がかかっているが、この大きな空間には重力がかかっていないのだ。
何なんだろうこの空間は。

浮き輪の左側の丸い部分が光っていることに気付く。
「何だろう、これ」と言いながら指で触れる。
すると、私の浮き輪の光る丸い部分の下辺りから細いチューブが伸びてノワールの浮き輪の右側に繋がった。
「へぇ、離れないようになってるんだ」

「動くにはどうしたらいいんだろう、ねぇノワール」
『ワカラナイデス』
「そうよねえ、前に行きたいんだけど、どうすれば」
すると突然、ゆっくりと前に進み出した。
「面白いわね、これ」
「考えた通りに動くんだわ」
『ホント、ソウミタイデスネ』
私達は思念で操作出来る浮き輪で無重力空間を浮遊しているのだ。

透明なプレートが近づいてくる・・これらは浮遊しながら漂っている様だ。
何か十字のものが描かれている・・十字の中に人がいる。
プレートは私の背丈くらいの長さ。
別のプレートが近づいてくる。
これには、滝の中で座っている人が描かれている。
上を見廻してみる・・上にもプレートが何十枚も浮かんでいる。
そして下にも。
どうやらこの空間は大きな球体のようだ。
そして空間を造っているのは透明の球体の壁のようだ。
その透明の球体の壁をよく見つめる。
外は海ではないか・・よく見ると魚が泳いでいるようなのだ。
空間の壁、球体の壁に近づいてみたくなる。
「あの壁に近づいてみない」
『イイデスネ』
浮き輪は私達の考えた通りにゆっくりと動いていく。
透明の壁自体が白く光っているように見える。
やっと壁に辿り着き、壁を触ってみる。
洞窟の透明の床と同じ材質のようだ。
海中に太陽の光がある程度届いているようで、この球体はそれほど水深が深くない場所にあるのだろう。そしてきっと、この海は綺麗で透明度が高いのだと想う。
また、海の明るさだけではこの空間はこんなに明るくはならないだろう。透明の壁自体が白く光っているところに、太陽の光が浸透した昼間の海の青い光が交ざり、この球体の部屋を青く照らしているのだ。
壁の向こうの赤い魚がこちらに向きを変え近づいて来る。
壁際まで来て踵を返して反対側へ遠ざかって行った。
この球体の壁はそれほど厚くはない。魚が見えるくらいには薄いのだ。それでもこの空間を維持出来るほどに頑丈なのだろう。
魚が小さくなっていくのを見送った後、二人も後ろを向き、球の中心に向かって移動していく。

何の為かは不明だが、どうやら、海の中の崖のようなところにある洞窟の入り口に直径が何十メートルもある透明な球体が設置されているのだ。しかもここに来るには洞窟を通ってくるしかない。
そして球体の中の空間だけ無重力なのだ。
また、この星の地表や洞窟と同じように空気が満ちている。
その空間には色々な人が描かれた何十枚ものプレートが浮いて漂っている。
そして、私とノワールも浮き輪を着けてプレートと同じ様に浮いて漂っているのだ。
上下左右を見回しながら私は呟く。
「夜はどんな感じに変わるんだろう」
ノワールが冷静に呟く。
『シロイヘヤニナルノデショウ』

空間の中央付近まで来たとき、横を向いた人が描かれたプレートが目の前に現れた。
これは洞窟の出口から見たプレートだ。
プレートに描かれた人は左側半身しかなく、その身体から棒が何本も伸びている・・何なのだろうこれは。

移動していくプレートの横を抜け、次のプレートが目の前に現れる。
そのプレートに近づくにつれ何かざわつきを感じる・・このプレートは今までのプレートとは何か雰囲気が異なる。
周りのプレートを見回し、その違いに気付く。
周りのプレートは無色透明だがこれは灰色っぽい。そして描かれた絵がぼやけているのだ。(※1)
気にはなったがそのまま通り過ぎた。
その時、ノワールが『にぇ』と呻いたことに私は気付かなかった。
その後のノワールの眼つきが変わったことにも、私は暫く気付かなかった。
ノワールの瞼は少し下がり、目が据わった様に遠くを見据える様になった。

後で解るのだが、この時ノワールは捕り憑かれたのだった。

また、私とノワールはこれが切っ掛けで、宇宙の古参種族である“大いなる種族”の末裔達を見学することに観光の主題を変えたのだった。

彼女らは“大天使”と呼ばれ宇宙種族達から崇められている存在達だったのだ。
そしてこの無重力の球体空間は、彼女ら大天使達を管理している部屋だったのだ。
種族の個体数が減り続けて残り少なくなった大天使達の状況を常に把握し、彼女達に何かあった時には必要な対処が出来るように常にネットワークを構築しており、その情報がこの球体空間に集められていて、管理者が見護るようになっているのである。

そう、ノワールに捕り憑いた管理者が私に語ったのだ。
大天使達の存在の素晴らしさとその願いと想いの尊さを。
私も、捕り憑かれたままそれを聞いていたノワールも、驚きを隠せずにその内容に惹かれていった。
そしてその後の観光の行き先は大天使巡りとなった。

しかしながら、何故、あの“大天使達を管理する部屋”に行けてしまったかは私にもノワールにも解らないままなんだ。
管理者も言っていたんだ、“ここに来る為の通路の入り口は、関係者以外には見えない筈だし、ましてや入ることは出来ない筈” だってね。
なのに私達は普通に洞窟の旅のまま、あの大天使管理ルームに入れてしまったんだ。
それには管理者も驚いていたというか動揺していた。関係者以外には誰にも解らないように、こんな場所に設置してあるんだからと。
こんなことは初めてだと驚きながらも、私達二人の心を奥まで探った後、管理者は私達に大天使のことを教えてくれたのだ。
そして球体の空間の入り口まで見送ってくれたのだ。

そういえば管理者がこう言っていたわ。
“貴女は特別だからここへ来られても不思議ではない”
どういう意味なんだろう、私にはよく解らない。
ノワールにも意味を聞いてみたんだけど、『シウデショウネ』とよく解らない返答しかしてくれない。きっとノワールも何か知ってるんだ。何で本人の私が知らないのよ。何か腹立つ。いつか聞き出してやる、ノワールめ。

先ずは何処へ行こうか。
“真朱(まそお)の絵”のある街へ行こうかな。確かここから一番近い筈だったと思う。

私達は洞窟を通って、来た道を帰り、広大でのどかな大草原で休憩しながら、大天使達を観光するのをワクワクしながら想像するのだった。
身長2000mもある古参種族の姿を。

※1:肉眼では見えないが、サードアイの視界ではネガティブなマインドを持ったエネルギー体が存在する場所は黒っぽく見える。このプレートだけ灰色に見えるのは管理者のマインドが入った管理者のプレートだったからなのだろう。しかしながら灰色に見えるのは管理者のマインドがネガティブとは言わないまでも余り善くない状態なのかもしれない。


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