mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 26×18×0.1cm(B5)
2021年
《物語(Story)》
【The Eyeballs Evil[邪悪な古代種族達 #3(The Evil ancient tribes #3)]】
それは頭上に覆い被さる様に、刀を構える微動だにしない武士の姿を見据える。
その異様な天蓋の様な異形には、鞭の様にしなり波打つ九本の長い触手がある。
その九本の触手の先端には、大きな眼球とおぼしき物が在る。
三つの瘤の様な部位から三つづつ伸びる触手と先端の眼球達。
その大きな九つの眼球に捉えられた者は、恐怖の表情を隠せない。
常に波打ち蠢く九本の触手の先端の、静止したかの様に獲物を捉える九つの眼に睨まれながら、身動きが取れない。
眼球達の上、ほぼ頭上からは、武士に向けてぬめぬめした突起が突き出ていて、その周りには無数の触手が蠢いている。
武士からは先程までの威勢は消え失せてしまった。
近づく異形の者に切りつけ様と振り下ろし、それでもどうしてもかわされ、そして焦りのまま振り回し始める。
武士は決して刀の腕前が無い訳ではない。また力が無い訳でもない。武士は達人の域なのだ。
それでも武士の刀は空を切るのみ。
只の一度もかすりもしない刀は左手に握られたまま、後ろ手で四つん這いでの僅かな後退りに引き摺られ、武器としての役目も果たさぬまま、この崖の上での武士の最後を物語る遺物と化す。