ーHare's worldー 晴れ(Hare)が紡ぎ出す絵と物語 宇宙の生命、それらが憧れる地球の女神 魅惑の世界が広がる Arts and stories spun by Hare. Lifeform in the universe, the goddess of the earth that they yearn for, the fascinating world spreads

戦闘機による護衛(Fighter Escort)

戦闘機による護衛

acrylic,
canvas 22×27×1cm(F3)
2026年



《物語(Story)》

【戦闘機による護衛(Fighter Escort)】

素晴らしい歌声だった。
最高のステージだった。

エレガント レディは我々の戦艦への慰問を終え、広報艦と伴に最寄りの基地へ帰還するところだ。
私は戦艦所属の戦闘機パイロットだ。
戦艦の艦載機であるこの戦闘機で広報艦をエスコートする任務を遂行中である。

エレガント レディは戦艦を降りても広報艦に乗り込むことなく、自身で飛んで戦艦を離れた。
基地へ向かい始めた今も広報艦に並走して飛んでいる。
私は広報艦と並走してエスコートすることを命令されているが、今は広報艦とこの戦闘機との間でエレガント レディが飛んでいるという形だ。
エレガント レディはその切れ長の瞳で時折こちらを伺っている様だ。
戦闘機との間合いを測っているのだろうか。

私のエスコートは基地までの行程の中間地点までだ。
その先は基地の戦闘機がエスコートを担うことになっている。
中間地点まで基地の戦闘機が彼女達を迎えに来るのだ。

間もなく中間地点だ。
私の戦闘機のレーダーが、中間地点で基地の戦闘機が空中で浮かんで静止していると示している。
軍の艦船や機体はほぼ総てが、ダークマター推進を推力としている。
ダークマター推進とは、次元の根源エネルギー量子であるダークマターが司る引力斥力を利用した推進システムである。
翼等で揚力を得る訳ではない為、静止していても浮かんでいられる。
惑星内であれば、重力とは反対方向に引力を働かせ、重力方向に斥力を働かせることで、重力を相殺して空中に浮かぶのだ。
もっと言えば、宇宙空間、大気圏内に関わらず、引力斥力を働かせることで全方向に移動が可能である。
引力斥力の大きさを調整することで、加速度や速度を調整できる。
だから、この戦闘機には翼は無いし、我々の戦艦も大気圏内で雲海の上に静止して浮かんでいられるのだ。

浮かんでいる基地の戦闘機が目視できる様になってきた。
こちらを向いていた基地の戦闘機が反対向きに向きを変えている様だ。
そして少しづつ加速して我々の速度に合わせてきた。
エスコートのスムーズな引き継ぎを行う為だ。
私の戦闘機に基地の戦闘機から通信が入る。
「エスコートご苦労様でした。後はこちらにお任せください。」
私も通信を返す。
「了解しました。宜しくお願いします。」

右を見ると、エレガント レディがこちらを見ながら左手を振っている。
スタビライザーを振って私にお別れの挨拶をしているのだ。
私もコクピット内で右手を振り返す。
エレガント レディは私の挨拶を見届けてから、飛びながら広報艦の方へ向きを変え、既に開いていた広報艦の自室のハッチへ近づく。
そして、直立姿勢に成りながら、器用にハッチ内に入っていった。
飛んでいる間も、向きを変える間も、ハッチ内に入る間も、被っていた帽子は飛んでいくことはなかった。
きっと何らかの方法で固定されているのだろう。

私は戦闘機を減速させ、暫くの間、基地の戦闘機にエスコートされて去っていく広報艦を見送った。
「エレガント レディの中間地点までのエスコートを完了しました。今から帰艦します。」
私は戦艦へ通信する。
「了解しました。帰艦して下さい。」
戦艦の通信士が応える。
そして戦艦の方へ戦闘機の向きを変え、加速をする。
左前方から陽光が降り注ぐ。
コクピットのキャノピーが光を変調している為、眩しさはない。
私は果てしなく広がる雲海に感嘆しながら、その白い大海原の上を飛んでいく。
遠くの方に船尾と艦橋の背を陽光に輝かせる我々の戦艦が見える。
戦艦に近づくに従い、真っ白な雲海に墨を落とす様に戦艦の影が黒くなだらかな凹凸に形作られているのが見える。
甲板ではテントの撤去作業が行われている。
撤去作業を眺めながら艦橋の方へ向かう。
艦橋の中では、数人の乗組員が私の戦闘機に手を上げて任務完了に応えてくれる。
私は艦橋の真横で戦闘機を静止させ、降下しながら前後逆に向きを変え、後方移動をする。
艦底が見えるまで降下し、左側で艦載機格納庫のハッチが開きつつあるのを見つめる。
そして開いたハッチに戦闘機を向かわせ、格納庫内に入る。
格納庫内のこの戦闘機の格納位置まで浮かんだままゆっくり移動して静止し、前後逆に向きを変える。
ランディック ギアを展開し格納位置に接地させた。
操縦桿システムから手を離し、暫くコクピット内でシートに座ったまま思い浮かべる。
“今日は楽しい日だったな”
“この戦争はいつまで膠着しているのだろう”
”戦争はいつ終わるのだろう“
日が沈む前には宇宙へ上がるだろう。
そして明日からはまた、敵の動向を監視しながら戦闘に備える日々が続くのだ。
いや、今日宇宙へ上った直ぐからだ。
私はそんな思いが湧いてくるのを首を振りながら振り払う。
自分の前に空間ロックされた操縦桿システムを見つめ、そして手を伸ばし、システム下面の相対空間ロックスイッチを長押しして空間ロックを解除する。
浮遊したままの操縦桿システムを左側へ移動させながら座席から立ち上がる。
先の見えない毎日を見据える様に、私はコクピットの前方、そしてそのキャノピーの向こうのハッチの閉まった格納庫内を見る。
数十メートル先の見慣れた薄暗い壁。
その壁を睨む様に見つめながら、私はコクピット前方下部の乗降ハッチへ向かった。


《戦闘機(宇宙軍戦艦艦載機)[構造説明図](Fighter (Space Force Battle Ship Carrier-Based Spacecraft) [structural drawing])》

内戦状態にある或る惑星における、宇宙軍に所属する戦艦の艦載機。

[諸元(Specifications)]
・全長(Length):13m
・全幅(Width):4.4m
・全高(Height):2.4m (着陸時(Landing State) 3m)

[コックピット(Cockpit)]
機体の前方上部に位置する。
・前側下方、後ろ上方、後ろ側方の視界が大きく確保されるキャノピー形状が設定されている。
・コックピット下部までもがキャノピーとして透明になっているのは、レーダー/センサー及び通信システムの上方を遮断しない為でもある。

[搭乗ハッチ(Boarding Hatch)]
コックピットの前方下部のキャノピーの一部がハッチと成っている。
・外部からハッチを開けると同時に、コックピットのシートの足元に設置された梯子ボックスから梯子が伸びてハッチから降りてくる。
・コックピット内に搭乗後は梯子ボックスのスイッチを押すことで、梯子が格納されてハッチが閉まる。
・降機時は梯子ボックスのスイッチを押すことで、ハッチが開き梯子が伸びてハッチからせり出す。
・パイロットの降機後にハッチを閉じたい場合は、梯子を上方へ持ち上げる様に力を加えれば、梯子が格納されハッチが閉まる。

[レーダー/センサー及び通信システム(Radar / Sensors, And Communication Systems)]
機体の前方下部に位置する。

[ランディングギア(Landing Gear)]
機体の中央下部の左右に2脚、左右のスタビライザーの下部に2脚の全4脚が設定されている。
・車輪ではなく板状である。
 これは、推進システムがダークマター推進である為に離着陸時の接地がそのまま格納庫薙いでの格納位置になる為である。
 また、機体下部及びスタビライザー下部の外壁がそのままランキングギアの接地面となり、スペース的にも構造的にもシンプルになる為である。

[機体エネルギー源クリスタル(Spacecraft Energy Source Crystal)]
機体中央下部に設置されている(全1マインド)。

[クリスタルキャノン(Crystal Cannon)]
機体の左右側部に設置されている(全2マインド)。
・クリスタルは通常は機体側部内に収まっており、キャノンのクリスタルエネルギー発射時は機体側部前方の発射口から発射される。
・高出力クリスタルキャノン展開時は、クリスタル後部に設置されたクリスタルキャノン展開用ダークマター推進球によってクリスタルが発射口から機体外部にせり出し、高出力クリスタルエネルギーを発射可能となる。
・宇宙空間での発射口への異物侵入、大気圏内での発射口への大気侵入を防ぐ為、クリスタルキャノン格納部内をクリスタルエネルギーにより正圧状態にしている。

[メインダークマター推進球(Main Dark-Matter Propulsion Ball)]
機体の後部に位置する(全1球)。
・次元に織り込まれた根源エネルギー量子であるダークマターが司る引力/斥力を利用することにより、機体を移動させる推進力とするシステム。
<引力/斥力作用ポイント(Action Points of Attraction/Repulsion)>
・引力/斥力の作用ポイントは機体の外側の球面上に現れる。
・機体は全天方向(前後、上下、左右、それぞれの斜め方向)にスライドする様に移動する。
 ・前進(Move Forward):機体が前進
 ・後進(Move Backward):機体が後進
 ・上昇スライド(Upward Slide):機体の向きはそのままに上昇
 ・下降スライド(Downward Slide):機体の向きはそのままに下降
 ・右側スライド(Right-Side Slide):機体の向きはそのままに右側へ移動
 ・左側スライド(Left-Side Slide):機体の向きはそのままに左側へ移動
 ・斜め方向スライド(Diagonally Slide):機体の向きはそのままに斜め方向へ移動

[スタビライザー(Stabilizer)]
機体の後部の左右に位置する(全2本)。
・スタビライザー後端に姿勢制御用ダークマター推進球が設置されている。
・スタビライザー中央内部にスタビライザー制御用ダークマター推進球が設置されている。
・スタビライザー前端にスタビライザー展開用ダークマター推進球が設置されている。

[姿勢制御用ダークマター推進球(Attitude-Controlled Dark-Matter Propulsion Ball)]
左右のスタビライザーの後端に位置する(全2球)。
・機体の姿勢を制御する。
・メインダークマター推進球のスライド移動に、姿勢制御用ダークマター推進球の姿勢制御を加えることにより、機体の向きを変えながらの上昇、下降、右旋回、左旋回が可能となる。
 機体の前進中の姿勢制御だけでなく、機体の後進/上下スライド/左右スライド/各斜めスライドでの姿勢制御も可能となる。
 ・上昇(Upward):機首を上方向へ向きを変えながら上へ移動
 ・下降 (Downward):機首を下方向へ向きを変えながら下へ移動
 ・右旋回(Right Turn):機首を右方向へ向きを変えながら右へ移動
 ・左旋回(Left Turn):機首を左方向へ向きを変えながら左へ移動
・左右の姿勢制御用ダークマター推進球の引力/斥力をそれぞれ上下逆方向に働かせることにより、機体をスピンさせることが出来る。
 ・右スピン(Right Spin):機体の前後軸を中心に右回転
 ・左スピン(Left Spin):機体の前後軸を中心に左回転

[スタビライザー制御用ダークマター推進球(Stabilizer Control Dark-Matter Propulsion Ball)]
スタビライザーの中央内部に位置する(全2球)。
・スタビライザー展開用ダークマター推進球により展開したスタビライザーを折り曲げポイント(Bending Point)で曲げることで制御する。

[スタビライザー展開用ダークマター推進球(Stabilizer Deployment Dark-Matter Propulsion Ball)]
スタビライザーの前端に位置する(全2球)。
・スタビライザーを展開させる。

〈スタビライザー展開(Stabilizer Deployment)〉
スタビライザー展開用及びスタビライザー制御用ダークマター推進球によりスタビライザーを展開することで、下記の様な機体の操縦が可能となる。

<左右へのスタビライザー展開(Stabilizers Deployment to The Left and Right)>
[スピン反転(Spin Inversion)]
・静止中、各方向への移動に関係なく、左右へスタビライザーを展開し、左右のスタビライザー制御用ダークマター推進球により、引力/斥力をそれぞれ前後逆方向に働かせることにより、機体を左右に回転させることにより反転することが出来る。

<上下方向へのスタビライザー展開(Stabilizers Deployment to The Upward and Downward)>
[フリップ反転(Flip Inversion)]
・静止中、各方向への移動に関係なく、左右のスタビライザーを上下にそれぞれ逆方向に展開し、左右のスタビライザー制御用ダークマター推進球により、引力/斥力をそれぞれ前後逆方向に働かせることにより、機体を上下に回転させることにより反転することが出来る。
 ・フロントフリップ(Front Flip):機首を下方向に移動させながら反転
 ・バックフリップ(Back Flip):機首を上方向に移動させながら反転

〈緊急時のダークマター推進球の使用方法(How to Use Dark Matter Propulsion Balls in an Emergency)〉
・緊急時は、メイン、姿勢制御用、スタビライザー制御用、スタビライザー展開用、クリスタルキャノン展開用の9球の総てを推進力として使用することにより、通常の1.5倍程度の推進力を得ることが出来る。


《物語(Story)》

【“エレガント レディ”と呼ばれるフローター~広報担当官として戦艦を慰問する~(A Floater Called “Elegant Lady”~A Comforting A Battle Ship As A Public Affairs Officer~)】

彼女は他のフローターとは違い、特別だった。
その振る舞い、身のこなし、言葉、そして歌声。
総てが別格だった。
そして外観もまた特別だった。
フローターとして初めて衣服を装ったのも彼女だった。
カラフルで且つさりげない装いが皆の注目を集めた。
彼女は、“エレガント レディ”という愛称に相応しい女性であった。

種族を越えた称賛。
外観の全く異なる相手への理解。
理屈ではなく感性で感じる感情。

宇宙ではとても少数派の我々ヒューマノイドにとって、彼女達を熱狂的に迎えることは、ある種の覚醒とも云えることなのかも知れない。

「本日の正午にエレガント レディがこの艦を訪れる。私と副艦長と各部門の部門長が甲板にて出迎える。その後、皆を集めて甲板にて彼女のコンサートが行われる。皆、彼女の素晴らしい歌声を楽しんでくれ。」

早朝の艦内放送で艦長がそう告げる。

今日はあのエレガント レディがこの艦に来るのだ。
この通達が我々の戦艦に伝えられた日から艦内は彼女の話で持ちきりなのである。もう10日に渡って皆待ちきれない想いなのだ。
彼女はとても有名だ。
会ったことがあるという者は少ないかもしれないが、誰もが一度は映像などでその姿を見たことはあるだろう。そして彼女の歌も聴いたことがある筈だ。
この艦の乗組員も多分全員が彼女のことは知っているだろう。
そんな有名な存在がこの艦を今日、慰問するのだ。

何だかいつもと違って皆そわそわしている様に見える。
艦内が落ち着きなく慌ただしく感じる。
俺も何度となく時計を見てしまう。
もうすぐ正午なのだ。

いつもと変わらず落ち着き払っている様に見せようと頑張っている艦長が、時計から目を離して副艦長に声を掛けて、二人でハッチを開けて艦橋を出ていった。
俺もその後を追う。

甲板に5名が並び、同じ方向を見つめている。
エレガント レディは自分で浮遊して艦へやって来た。
その後ろを軍の広報艦が彼女を護る様にこちらへ近づいてくる。
広報艦は小型艦ではあるが、彼女の部屋もあり、何不自由なく過ごせる様になっていると訊く。
彼女は我々の艦の前で広報艦から出るのではなく、ずっと手前から自分で浮遊して我々の艦を訪れるという演出をしているのだと気が付く。

甲板で簡易的な歓迎式が行われた。
一列になった艦長や副艦長や部門長達がエレガント レディと付き添いの広報艦の士官達を出迎える。
艦長が訪問に対する謝辞を述べると、エレガント レディは誰もが魅了される声でこの艦への招待に御礼を言いコンサートへの期待を伝えた。

俺はエレガント レディの慰問に合わせて記録係を任命された。
エレガント レディの慰問を映像に記録してまとめる様に艦長から命じられたのだ。
通常の私は情報観測官として艦橋内で任務をこなしている。
宇宙空間の戦況を観測し情報をまとめて宇宙船の戦略を立てる為のエビデンスを与えるのだ。
そのスキルを買われて慰問の記録係を任されたのだろう。
だから私も艦長と副艦長の後を追って艦橋を出たのだ。

甲板は太陽の日差しを浴びて眩しい。
我々の宇宙船は雲海の上に停船している。
風は吹いている筈だが、今は甲板の縁には全周に渡って高さ6mの透明フェンスが立てられていて風は甲板には到達しない。
エレガント レディと呼ばれる彼女は我々の様に直立した状態で身長5m程である。
だから大き過ぎて艦内に入ることは出来ない為、甲板でコンサートが開かれる予定になっている。
甲板にはイベント用のテントがコンサートの為に設置されている。
乗組員全員が彼女を見たいだろうが、艦内にそれ程の人数が収用できる部屋は無い。だから彼女が艦内に入れたとしても結局は甲板でコンサートが開かれることになっただろう。

高さ6mの透明フェンスの一部が2.5mまで下げられており、慰問客を迎える準備がされている。2.5mまでなのは甲板への風の吹き込みを最小限にする為であり、その状態でエレガント レディを迎える。
広報官を迎える時だけは0mに下げる筈だ。
浮遊してこの戦艦への慰問にやって来たエレガント レディは、その透明フェンスの下げられた部分から浮遊した状態で甲板に入る。
彼女は衣服を纏って浮遊している。
様々な色彩に彩られた上着を羽織っている。
その下で腕に似た二本の筒が長い袖の服に袖を通している。
後ろへ伸びた二本の筒も衣服に包まれている。
そしてその二本の筒を下方へ向けながら、頭をこちらへ向けたまま身体を下へ折り曲げる様にして二本の筒の先端を更に前に曲げて甲板に設置させた。
彼女の後を付いてきていた広報艦が、戦艦の甲板の高さに合わせて横付けする様に停船した。
広報艦の船殻の表面は広報スクリーンになっており、エレガント レディの写真や映像が映されている。
広報艦のハッチが開き桟橋が伸びてきて戦艦の甲板の端に架けられる。
そして二人の広報官が桟橋を渡ってくる。
広報官達は甲板に足を掛ける。
甲板には、彼らが足を掛けた場所から透明フェンスの下げられた部分まで、通路を造る様にポールが伸びていて並び立っている。
甲板に立つ彼女は広報官が到着するのを待ちながら、一列に並ぶ艦長や副艦長や部門長達を印象的な瞳で見つめている。

エレガント レディはフローターと呼ばれる種族である。
フローターは元々はこの惑星の住民である我々の遥か祖先に造られた種族であるが、現在は一つの宇宙種族として独立している。
彼らは通常、我々を体内に乗せて惑星中を移動する役目を得ている種族である。
旅の乗り物として契約を交わし、我々を乗せて目的地まで連れていくのだ。
彼らは、体内で発生させる気体で惑星内を浮遊して、気体を吹き出すことで移動するのだ。
彼らの通常の外観は10m程の小さな船の様な感じだ。そして皮膚は透明で体内が透けている。
しかし彼女は通常のフローターとは違う。
彼女は多くの他の宇宙種族の様に、直立した状態に成れるのだ。
だが実際に立っている訳ではない。
脚で立っている様に見えるが、脚に見えるものは気体噴射口及びサブスタビライザーであり、浮遊移動の推進ノズル及び浮遊移動している時の姿勢の安定を図るものである。
だから今甲板で立っている様に見えるのも、実は先端を足の様に曲げた気体噴射口を甲板に触れさせて身体を浮遊しているのだ。
そう、彼女に限らずフローターという種族は、睡眠中も含めてほぼ常に浮遊しているのだ。
因みに腕の様なものはメインスタビライザーである。
腕の先端は5つに別れていて我々の指の様に動くらしい。
また、彼女は他のフローターに比べ身体が小さい。
先程も言ったが、通常のフローターの全長は10m程。
彼らの最後尾にはセンサーの役目を果たす尻尾の様なものが付いているが、それは気圧や成分などの大気の状態を感知するものであり、そのセンサー尾を含めて10m程だ。
もし他のフローターが彼女の様に直立できたとしたら、その時の身長は7m程だろう。直立した時は頭を折り曲げ、センサー尾が後ろに向けられるからだ。
彼女は今の直立した状態で5m弱であり、船の様な姿勢になった時は7m程ではないだろうか。
彼女は他のフローターに比べ、一回りかそれ以上に小さいのだ。

彼女はその小ささ故に、我々の大人を乗せることが出来ず、子供しか乗せられないのだ。
彼女はそれをコンプレックスに思っているらしく、他のフローターより目立てることを探したらしい。
そして他の宇宙種族の様に直立することを思い付き、それを実践した。
また、衣服を纏うという他のフローターは誰もしていないことをするようになった。
彼女はフローターの中で目立つ様になっていった。
それは目立つというよりは奇異な目で見られているという方が正しかった。
そしていつしか彼女のこの行動は、我々の間でも話題になり始めた。
彼女のその立ち振舞いと着こなしから、我々からはエレガント レディと呼ばれる様になっていった。

目の前に浮かんで立つ彼女は衣服の着こなしもエレガント レディという呼び名に相応しく美しい。
本来フローターは腹にある器官に気体を溜める為に腹が膨らんでいるが、今の彼女にそれはない。
きっと見た目を考えて凹ませているのだろう。
それを考えると、彼女は色々なことを気にしており、自分がどうあるべきかを常に考えているのだろうと推測できる。

現在、我々の惑星は内戦状態にある。
そして膠着状態が続いており、平和時に比べれば当然に人々は殺伐としているが、悲惨さや悲観さは薄らいでいた。
我々の軍部は兵の士気を保つ為に色々考えたのだろう。
今では誰もが知っていてその歌声に魅了されているエレガント レディに、軍の広報担当官として働くというオファーを持ち掛けたらしい。
そして彼女はそのオファーを受け入れて、こうして軍の各宇宙船を訪問して回っているのだ。

彼女の歌声は素晴らしい。
フローターの声というのは元々美しい。
それは声を発する時に種族の特徴である浮遊する為の気体を喉に送っている為であり、うっとりする様な魅了される声なのだ。
彼女は、その気体を最大限に使って歌を歌うということを極めているのだ。
その歌声の噂は瞬く間に惑星中に拡散していった。
今では誰もが彼女を知っていて、誰もが彼女の歌声に魅了されているのだ。

彼女の宇宙船への訪問は大気圏内で行われる。
それは彼女の歌声を聴くには甲板で行われる必要がある。甲板で彼女の歌声を聴くには大気が不可欠だからである。
そして彼女は大きくて艦内には入れないのである。
また乗組員全員が聴くには甲板で行う必要があるが船外服では…。
と、大気圏で彼女の慰問が行われる理由は多々ある。

昨日まで宇宙空間で待機していた我々の宇宙船は、今日は大気圏へ降下をしてきた。
勿論、彼女の歌に魅了される為に。


《このアートワークに関連するアートワーク(Artwork related to this artwork)》

※リンク(Link)
“エレガント レディ”と呼ばれるフローター~広報担当官として戦艦を慰問する~(A Floater Called “Elegant Lady”~A Comforting A Battle Ship As A Public Affairs Officer~)


《このアートワークに関連する構造説明図(Structural drawing related to this artwork)》

※リンク(Link)

戦闘機(宇宙軍戦艦艦載機)[構造説明図](Fighter (Space Force Battle Ship Carrier-Based Spacecraft) [structural drawing])

戦艦(宇宙軍所属)[構造説明図](Battle Ship (Space Force) [structural drawing])

フローター[構造説明図](The Floater [structural drawing])

広報艦(統合軍所属)[構造説明図](Public Affairs Ship (Assigned To The Unified Command) [structural drawing])


《“フローター”を描いたアートワーク(Artwork depicting “Floater”)》

※リンク(Link)
カテゴリー【フローター】(Category【Floater】)


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