mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 26×18×0.1cm(B5)
2020年
《物語(Story)》
【果樹園の中の遺跡ーテレポーターー(The ruins in the groveーThe teleporterー)】
ふと立ち寄った果樹園。
仲間と伴に気晴らしも兼ねた、密かに着陸し隠した宇宙船の周辺確認に出掛けた。
私の直ぐ後ろをフローティングキャリアが付いている。仲間の直ぐ後ろには肩撃ちレーザーキャノンが付いている。
果樹園の奥の方から、何かが私の心に囁きかける気がした。
誘われるまま果樹の間を歩く。仲間も私に習う。
しばらく歩くと果樹に紛れて大きなリングが立っているのが見えた。遺跡か何かだろうか。
また心に囁くような感覚。このリングが私を呼んだのか。
私は仲間と二人でリングの前に立ち、それを眺めた。
遺跡のようではあるが、その割には朽ちていない綺麗な外観に違和感を覚えながら、細部を眺めた。
雑草も遺跡には纏わりついておらず、雑草の方が避けているかのようだ。リングの中央の穴まで上り階段があるが、階段の下の方にだけ雑草が生えている。雑草達は階段の上の方には行くことが出来ないとでもいうように。
私の心に囁きかける感覚が強くなっている。
この遺跡は何らかの機械装置であり、まだ機能している。もしかしたらこの機械装置は意思さえ持っているのではないかと感じる。
「君達は誰かね」
声に振り替える。老人が一人いた。
「どうしたんじゃ、果樹園に用かな」
『すみません、散歩していて勝手に入ってしまって』
「そうか、別に良いよ、君らそれが気になるのか」
『あっ、はい』
「それはわしが子供の頃からあるんじゃ、もっとずっと前からあるんじゃろう」
「昔は滑り台にして遊んだもんじゃ、その穴の向こう側に鉄板を付けてな」
振り返って穴を見る。
後ろから老人が話す。
「爺さんが鉄板を付けてくれたんじゃが、爺さんが言っとったのう、“これはとても遠い処へ行けるんだ”ってな」
その言葉に老人の方に向き直る。
「どういう意味か解らんかったが、その時の爺さんの目は遠い目をしておったなぁ、何かとても淋しい目じゃった」
そう話す老人の目もまた遠い目をしていた。