mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 26×18×0.1cm(B5)
2020年
《クリスタル島の防人について》
[防人]
クリスタル製の鎧を纏う。
・ブーツの下部はグレースフルクリスタル(柔らかい赤いクリスタル)製。
ダークマター推進球で姿勢制御を行う。
空中に浮遊することも可能。
・背部のメイン推進球(3球)
・頭部の補助推進球
・腰部の補助推進球
・踵部の補助推進球
背部、首部のクリスタルのエネルギーで身体の周囲にエネルギー場を形成し防御を行う。
頭部、額部のクリスタルで知覚拡張を行う。
防人のエネルギー源はクリスタルエネルギーであり、彼女らは食物の摂取は行わず、島のクリスタルからエネルギーを得ることで生きている。寿命は約300年。
[武装]
左手:クリスタル槍
・伸縮するリードで左肘と繋がる。
・槍自身にセンサーとダークマター推進球を装備しており、目標を自動追尾出来る。
右手:クリスタル矢
・保持部に2つのダークマター推進球を装備しており、その球の互いの引力斥力により、矢を射出する。
・右腰部に予備矢ホルダーを装備。
《物語(Story)》
【クリスタル樹の森の防人(The Guardian of the Crystal Tree Forest)】
クリスタル、それは鉱物の中で特別に強いエネルギーを持つ者達。
鉱物は、動物や植物と同様にマインドを持っている。そう、生きているのだ。
彼らは、人である私達と同様に個々に異なるエネルギーを持っている。
鉱物の種類毎にエネルギーの傾向は分けられるが、同じ種類の鉱物でも個々にエネルギーは異なる。
人同士でも、合う合わないがある様に、鉱物同士、そして人と鉱物の間にも合う合わないがあるのだ。
光のエネルギーを多く持つ人は、光のエネルギー、涼しいエネルギーを発する鉱物に惹かれる。
闇のエネルギーを多く持つ人は、闇のエネルギー、痛いエネルギーを発する鉱物に惹かれる。闇のエネルギーを持つ鉱物は大抵その外観の色も、黒や暗い青、暗い茶色などダークな色の外観を持つ。
クリスタルは光のエネルギーがとても強い。
大抵の人はそのエネルギーが強すぎて長時間は持てない程である。
クリスタルの持つ強いエネルギーに見合った、強いエネルギーを持つ人のみが、常時身に付けることが出来るのである。
そうでない人が常時身に付けている場合、それはエネルギーを感じる感覚を棄ててしまった人だということである。そして棄ててしまっていることに本人は気づいてもいない。そう、何も感じていないのだ。
クリスタルはその強いエネルギーの為、様々なエネルギー源として使われている。
大きなクリスタルは宇宙船のエネルギー源にも使われる程である。
多種多様なエネルギー源として使われる様になったクリスタルは、採取され続け、枯渇するに至った。
そして人は、人口クリスタルの生産を始めた。今では、エネルギー源として使われる多くが人口クリスタルである。そのエネルギーで生活に十分なエネルギーを賄うことが可能となっている。
しかしながら、人口クリスタルの疑似マインドは、やはり本物のクリスタルのマインドのエネルギーには及ばない。
その本物のクリスタルのエネルギー、特にサイズの大きなクリスタルを求め、人は、未開の惑星を探索するようになった。
ここは、クリスタル樹の森。
この惑星は、宇宙連合に存在は確認されてはいるが、殆ど無視されている星系の惑星。
クリスタル樹の森は、この惑星の一つの島に存在する。
この島は総てがクリスタルに覆われていると言ってもいい。
島の周りの海底にもクリスタル樹が拡がっている。
島の砂浜は、クリスタル樹の森から風雨によって流されたクリスタルの欠片や、打ち寄せる波の侵食によって削られた海底のクリスタル樹の欠片が集まり出来ている。そのクリスタルの砂浜が島の周りを囲んでいる。
海底のクリスタル樹は、陽光を受けてクリスタル自身のエネルギーを輝かせ、海面の陽光の反射と相まって海全体が煌めいている。
また月夜には、月光を受けたクリスタルがエネルギーを放出し、海底全体が青白く輝き、遠くまで幻想的な光景が拡がる。
そして島のクリスタル樹の森も、月光を森全体で受けてキラキラと輝くのである。
この島は、クリスタル樹の森のエネルギーだけでなく、周りの海全体も、とてつもないエネルギーを放っている。
その様な特別の場所なのである。
私は、このクリスタル樹の森に住む防人。
この森を護る使命を帯びている。
この島に迷って入ってくる動物などを追い払うことが使命の一つ。
この島にはクリスタル樹の他には殆ど何もない。
私のエネルギー源はクリスタルエネルギー。
私はクリスタルエネルギーのみで、もう200年以上ここで過ごしてきた。
私は防人として生まれた存在。
この惑星に時折、宇宙船が飛来する様になった。
何隻かが飛来するにつれ、その目的がこの島であることに気がついた。そしてこのクリスタル樹の採取が目的なのだと判ってきた。
私は、クリスタル樹を持ち出そうとした何人もの盗賊を殺した。
宇宙船も何隻か破壊した。
海に墜落した宇宙船もあり、毎夜、月夜に輝く青白い海にその残骸が美しく浮かび上がる。
ここのところ、宇宙船の飛来数が増してきている。
私独りでは対抗仕切れなくなるだろう。
何とかしなければならない。
彼女らを目覚めさせなければならない………
島の中央には半分が地下に埋まったクリスタルのドームが存在する。
このクリスタルドームは私の家でもある。
そして、ドームの地下には彼女らが眠っている。
彼女らの姿は私と全く同じ。
このクリスタルの島は、5万年前から防人に護られている。
最初の防人は、自分自身の後継者を自分自身にした。
自分自身のクローンを造ったのだ。
私も最初の防人のクローン。
そして眠っている彼女らも同じくクローン。
ドームの地下には9体のクローンが眠っている。
彼女らの一人は私の後継者として、私が死んだ後、防人となる。
9体が眠っている理由は、何か特別な事態が起きたときの為だ。
もうすぐ、その特別な事態が起きそうなのである。
これ以上、宇宙船の飛来数が増えれば、彼女らの何体かを起こさなければならない。
いや、もしかしたら9体総てを起こさなければならないかも知れない。
このクリスタルの島を護る為の戦争が始まるかも知れないのだ。
とうとう戦争が始まった。
それはある日突然始まった。
20隻以上の宇宙船が一斉に島の上空に降下してきた。
そして攻撃を仕掛けてきた。
島のクリスタル樹がビームキャノンにより破壊されていく。
私は他のクローン達を起こしにドームの地下に向かった。
私達10人は反撃した。
武器としてクリスタルを利用したクリスタルキャノンで立ち向かった。
大型のクリスタルキャノンは3体しかなく、小型のクリスタルキャノンも動員した。
しかし、宇宙船の一斉攻撃に劣性であった。
防人の3体は負傷し動けなくなっていた。
1体は死亡した。
島が殺られるかも知れない。
そう想ってしまった。
そして私は、最後の手段を仲間達に提案した。
皆が同意した。
私達防人は、島の総てのクリスタル樹達に対して、同意を得る為の命令にも等しい呼び掛けを行った。
私達は思念で島中のクリスタル樹達にお願いした。
“エネルギーを一斉に上空に放て” と。
島中のクリスタル樹が、海底のクリスタル樹が、高音の響きを発しながら眩く光り始めた。
島の大気が震えている。
島中が眼も開けられない程に光り輝いている。
高音の響きが意識すら遠退くかと想うほどに心を揺さぶっている。
島中のクリスタル樹が同調したエネルギーは、身体が細かく引き裂かれるのではないかと感じる程に、高ぶっていた。
空間がこれ以上持たないという程に騒ぎだしたと同時に、総てのクリスタル樹からエネルギーが放たれた。
眩く光り輝く巨大なエネルギーの塊が上空へ昇っていく。
そしてエネルギーの魂は、上空の20隻以上もの宇宙船を飲み込んでいく。
宇宙船らは次々と姿勢制御を失い始める。
そして次々と降下し始める。
爆発しながら墜落している船もある。
島は宇宙船の残骸でまみれていた。
まだ燃えている船もある。
海の至る所で煙が上がっている。
私達防人は、攻撃で破壊されたクリスタル樹や宇宙船の残骸に押し潰されたクリスタル樹を眺めながら、呆然としていた。
知らないうちに頬を涙が伝っていた。
島中のクリスタル樹から今まで聴いたことの無い唸りが聴こえていた。
私達防人とクリスタル樹は、戦いに勝利した。
だが、私も、仲間の防人も、クリスタル樹も、皆が泣いていた………