ーHare's worldー 晴れ(Hare)が紡ぎ出す絵と物語 宇宙の生命、それらが憧れる地球の女神 魅惑の世界が広がる Arts and stories spun by Hare. Lifeform in the universe, the goddess of the earth that they yearn for, the fascinating world spreads

心(Heart)

acrylic,
canvas 32×41×2cm(F6)
2016年



《物語(Story)》

【心(Heart)】

私はここに来た。
探し求めた、ここに来た。

私の前に在るのは、光。
闇の中にただひとつ輝く光。

ここは、或る星の衛星。
その中心部にある、空間。

そして、私の心。
自分では辿り着けない心の核心。
無意識。

私は、私の心の中に、今、入った。
ここは、心の中を 心の核心を 無意識を 映し出す空間。
それを観るための、それを知るための、空間。
この衛星は自然のものではない。
今は亡き、叡知を極めた種族が造り出した施設。

人は自分のことを知っているようで知らない。
自分の本当の心を理解しているようで理解出来ない。
こうである筈、これが自分、と決めつけたものが自分であると定めている。
無意識、それは自分では知ることは出来ない。

私は休暇をここに来る為に充てた。
仲間は今頃それぞれの故郷や観光地で過ごしているだろう。
ここには、いつか来てみたかった。
私の願いだった。
故郷の星から嫌われ続ける私は、そこは愛する場所であるが帰る場所ではない。仕事を終える毎に報告の為に帰るが、帰る場所ではないと常に想っている。
行き場所のない想いが自分をいつも支配し、行き場所を探す衝動が自分の生きる希望となっている。
非ヒューマノイドを探す仕事を押し付けられながらも続けているのは、この仕事の中で、実はそれを探すことが出来るかもしれないと考えているからである。

私が入ったこの空間は、私の心は、真っ暗であった。
目の前にかざす自分の手も全く見えない程の深淵だった。
普通なら、どんなに真っ暗でも、私は仄かに空間を見ることが出来る。ダークマターの満ちる空間をその仄かな光の粒で照らし出されているのを見るからだ。
だが、ここの空間は全くの深淵。何も見えない。
そして、この深淵は私の心なのだ。本当の心なのだ。

私は衛星のこの空間の中心へと進んでいく。
自分自身の心の暗さに驚き、そして薄ら笑いさえも浮かべながら。
腰に着けたスラスターが不機嫌な音を立てながら、私の身体を少し斜め向きにしながら進め様とする。何やら調子が悪いのだ。
私はスラスターを使うのを止め、身体の表面に張った磁場に対し、ダークマターに同調し引力を作り出す様、想いを送った。
私の身体は徐々に前に真っ直ぐ進み出した。

もう、どの位こうしているだろう。深淵の中で、何処かに消え入ってしまいそうな意識の中で、前に引っ張られる感覚だけが、私の存在を確かなものにしている。

暫くして、深淵の中で何かが蠢いている様な感覚に襲われた。何かが私を見つけた様な感覚に。
突然、何かが目の前に現れ、私を見据え、去っていった。不思議に怖さは感じない。
そして、また別の何かが現れ何かを叫ぶ様な動作をして去っていった。
そしてまた…。
何十回と続く、黒い艶に輝くもの達を見続けながら、私は気付いた。
これらは、私、私そのもの。
悪魔と呼ばれる、愛を知らず、自分を愛せず、誰も愛せず、ただ傲慢な、私の心の半分…。
この私の半分がこれらを愛しく想う。
同時にもう半分が、これらを嫌い、これらを憎み、忌まわしいと想う。
その想いを更に半分が滅ぼそうとする。

私はいつなんどきも、二つの心が葛藤する。
そして苦しむ。
互いに癒されず、互いに攻撃し合う心。
これが私。

それから永遠と想える様な時が過ぎ、自分という存在を忘れてしまいそうな、忘れることが出来そうな、闇に溶け入りそうな感覚に陥っていた頃、前方に一点の何かが在るのに気付いた。
白い、緑の光…

それは、闇しかない筈の種族の心に、確かに輝く光であった。
闇の真ん中で、優しく、そして厳しく、清らかに輝く真実であった。
私はその光に惹かれていった。どうしても惹かれていった。
今まで隠そうとして隠せなかった想い。
誰かと出逢い、触れ合う度に沸き上がる衝動。
それは本来、私には在ってはならない心であった。
それは愛。

私はその光に包まれていった。
私の真実の光に。

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