mechanical pencil(シャープペンシル),
acrylic,
illustration board 18×26×0.1cm(B5)
2024年
《物語(Story)》
《幽玄の世界(The Yugen World)》
【タウントレイン [第四話]:クリスタルキャノン(The Town Train [The fourth episode]:The Crystal Cannon)】
私は機関車に向かって通路を歩いている。
日用品が色々と減ってきたからだ。
機関車には物品倉庫があり、日用品や建材などあらゆるものが蓄えられている。倉庫にない物品でも時間を待てば列車管理人が揃えてくれる。
機関車には列車管理人の家もある。私は管理人の家のベルを鳴らす。見事な髭を蓄えた列車管理人が扉を開けて挨拶をする。私も挨拶を返す。
私は紙に書いた“欲しい日用品リスト”を管理人に渡す。管理人はそれを受け取ると、“付いてきな”というように私に手招きして物品倉庫に向かう。
私達は物品倉庫に入って、二人で日用品リストを見ながら籠に次々と日用品を入れていく。ほぼ入れ終わった頃、突然にサイレンが鳴り響いた。私は列車管理人の目を見る。
列車管理人は“レールに不具合が出た”と言いながら物品倉庫を飛び出した。私も管理人の後を追う。
列車管理人は機関車の制御室に入り、何かを操作し始めた。私も制御室でそれを眺めている。
管理人は叫ぶ。“列車の前方に障害物だ”
そう言いながら隣の制御盤を操作し始める。
そして、“これからクリスタルキャノンを発射する”と叫んだ。
私はその展開に唖然としながら、初めて聞くクリスタルキャノンという言葉に驚いた。
機関車の屋上で何かが動く機械音がする。どうやらクリスタルキャノンを発射するクリスタルが準備されているようだ。
先程から列車の速度が落とされ低速になっている。
制御室のモニターには列車前方の景色が映し出されている。レールの前方に黒っぽい何かがある。
列車管理人は、“発射”と言いながらクリスタル操作桿の先端にあるスイッチを親指で押した。
モニター上部から輝くエネルギーがモニター中央の何かに向かって発射された。その瞬間、その何かは砕け散り、散った残骸も消え去ったようだった。
“あれは、この世界の忘れ形見だ” と列車管理人は呟いた。
“忘れ形見?” と私は聞き返した。
“何かを見つけることが出来た者達がこの世界を去るときに置いていった残留思念の塊なのさ” と列車管理人は言う。
“この世界は思念が物質化し易いんだよ、そういう世界なのさ” と管理人。
“この列車が走るレールもクリスタルの思念が造り出しているんだよ、知ってたかい?” という管理人を私は凝視し驚きながら聞き入る。
“レールは列車の前方100mから後方100mまでの区間しか存在しないんだよ”
“この機関車にはクリスタルが二つあってな、一つは今クリスタルキャノンを発射したサブクリスタルだ”
“そしてもう一つは、列車の動力源の空気エンジンを動かす為の圧縮空気の圧縮をそのエネルギーで手伝うメインクリスタルだ”
“因みに空気エンジンは、180度V型12気筒空気エンジン×16基の192気筒空気エンジンだ”
“先頭のこの機関車とは別に列車の中央部にももう一つの機関車があるから、全部でクリスタルは四つだな、因みに四つとも12mもある巨大なものだ”
“四つのクリスタルのエネルギーが機関車や住宅車の総てのエネルギーを生み出しているんだよ”
“先程の日用品も総てクリスタルの思念エネルギーが生み出しているんだよ”
私は唖然としながら聞き入っていた。
私はこの世界のことを何も解っていなかったようだ。
“籠は後で返してくれればいいよ” という管理人にお礼を言って、私は日用品の入った籠を腕に提げて住宅車へと続く通路を歩く。まだ私は列車管理人の話に呆然としていた。
私はこの世界のことを何も知らないのだ。
それどころか、私は、何故この世界に居るのかさえ何も解っていないのだ。
何故、この列車に乗り、何故、この街に住み、何故、この幽玄の世界に居るのか、何も解っていないのだ。
私はこの幽玄の世界で何を求めているのだろう。
果てしないこの世界で何を探しているのだろう。
果てしなく走り続けるこのタウントレインで何処へ向かっているのだろう。
私は何も解っていない。
(…世界の仕組みに驚く…)
《幽玄の世界について(Regarding The Yugen World and )》
青く仄かに光る果てしない世界
果てしない青い平原を果てしなく走る列車
それはタウントレイン
果てのない幽玄レールを走る街
永遠に何かを求めて彷徨う人達が住む街
タウントレイン、それは幽玄の街
《タウントレインについて(Regarding The Town Train)》
機関車、住宅車、公民館車からなり、機関車に設置されている巨大クリスタルをエネルギー源とし、空気エンジンを動力源とする。レールはクリスタルの思念が造り出す。
住宅車には、一車両で一邸宅の大邸宅、二階建ての大きな間取りの住宅、二階建ての小さな間取りの住宅などがある。
《幽玄の世界の住人について(Regarding the inhabitants of The Yugen World)》
基本的に口から食物や水分を摂取しないでも生きられる。住人は空間に潜むエネルギー(次元の根源エネルギー)をそれぞれが直接取り込むことにより生命を維持している。
《タウントレインの詳細(Details of The Town Train)》
<動力源>
・機関車に動力源となる空気エンジンとクリスタルが設置されている。
・補助用としてサブクリスタルが設置されている。
[空気エンジン]
・圧縮空気によって動作するエンジン。渦巻き状の導管による空気圧縮とクリスタルエネルギーによる空気圧縮を併用する。
・180度V型12気筒空気エンジン×16基の192気筒空気エンジン。
[クリスタル]
・列車の空気エンジンを動作する為の空気の圧縮をサポートする。また、街の生活に関するエネルギー源となる。
[サブクリスタル]
・メインクリスタルの補助用クリスタル。列車前方の障害物の排除や他方向への攻撃が必要時は、クリスタルキャノンとしてクリスタルエネルギーを発射する。
<レール>
・レールはクリスタルの思念が造り出している。列車前方にレールが造り出され、列車後方のレールは消えていく。
・車輪がレールを上下で挟み込む構造。
・列車が走行する範囲のみレールが造り出される為、レール寸法や車輪に対してのクリアランスが極めて高い精度で造り出される。よって走行による振動は、車輪基部のダンパーの効果と相まって殆んど感じないようになっている。
<機関車>
・機関車は先頭車両と中央車両の二つがあり、同時に稼働する。
・列車の動力源である空気エンジンとクリスタル、そしてサブクリスタルが、それぞれ二つの機関車に設置されている。
・二人の列車管理人が二つの機関車をそれぞれ担当している。
・機関車は列車管理人の住宅を兼ねている。
・機関車には、機関車と公民館車と住宅車の為の給水施設や物品倉庫などがある。
<住宅車>
・一車両で一邸宅の大邸宅、二階建ての大きな間取りの住宅、二階建ての小さな間取りの住宅などがある。
・住宅によっては、屋上に庭が造られている。
・住宅車の中央部に階段が設置されていて、一階の玄関、二階の玄関、屋上、そして通路へも繋がっている。
・住宅車の一階の、列車の進行方向に対し右側には、住宅同士を行き来する為の通路が設置されている。また、最前の住宅車と機関車とを繋ぐ通路も設置されている。
・進行方向に対し左側には、窓を開放した時の風の吹き込み防止用の仕掛けが設置されている。
一般住宅:各階の窓の前方と上方と下方に透明のプレートが迫り出す。
大邸宅:一階、二階通しの前方の大型透明プレートと、一車両通しの上方と下方の大型透明プレートが迫り出す。前方、上方、下方の他に後方の透明プレートも迫り出す。吹き込み防止用プレートと同時に二階のベランダが迫り出す。
・停車時には、住宅車の進行方向に対し左側の中央部(階段が設置されている部位)の一階部分が地面に接するようにレールの外に斜め下向きにせり出すことにより、住人が住宅から外に出ることが出来る。
<公民館車>
・住民が共有で使用できる施設。
・学術や文化についての知識を得る為の情報端末や図書館が設置されている。
・住民が交流を図る為のスペース(大部屋、小部屋)が設置されている。
・タウントレインが走る幽玄の世界についての情報を情報端末で検索した場合、検索者によっては個別の情報が提供されることがある。
・公民館車は先頭機関車の次に位置している。
<車両編成>
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+
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🔴:機関車・・・2両
⚪:公民館車・・・1両
🔘:住宅車(大邸宅)・・・8両
🔵:住宅車(一般住宅)・・・30両
“幽玄の世界”を描くシリーズ(Series depicting “The Yugen World”)
※リンク(Link)
→【タウントレイン】シリーズ(【The Town Train】series)
“幽玄の世界”と関連し、またタウントレインが描かれたアートワーク(Artwork related to “The Yugen World” and depicting The Town Train)
※リンク(Link)
→テイルコートとトップハットを装う狐紳士(A Fox Gentleman in a Tailcoat and Tophat)[地球のモノノ怪達 #3(The Mononoke on The Earth #3)]
“幽玄の世界”と関連するアートワーク(Artwork related to “The Yugen World”)
※リンク(Link)
→新しい駅に向けて(Hacia nuevas estaciones)