mechanical pencil,
acrylic,
illustration board 18×26×0.2cm(B5)
2022年
《この指輪について》
これは夢の中の出来事。
私は急ぎ足になり何処かへ向かっていた。
敷地を囲うフェンスを抜けるときに、左手の人差し指に着けていた指輪がフェンスに当たってしまった。それは龍の指輪だった。頭を人差し指の根元に向かって身体を巻くように嵌められていた。フェンスに当たったことで、その龍の尾が指から剥がされるように伸びて曲がってしまった。
“うわぁしまったぁ” と私は立ち止まり、指輪を眺めた。
私は二度、指輪を眺めたと想う。
その瞬間、何故か私は、何かの台の上に置かれた異様な工芸品を見ていた。それを私は直感的に指輪だと想った。一見すると到底指輪とは想えない物だが、そう想った。
それはとても細かな細工が全体に施されていて、繊細ながら重厚な物だった。指に嵌める部分が確かにあり、そこから繊細な繋ぎ部分が伸び、異様な本体部分に繋がっていた。
細かな構造物が組上がって全体を成しているようで、それぞれに施されたクロームめっきが、この異様な指輪全体に、暗い輝きを纏わせていた。所々にある宝石がクロームと対比を成して輝いていた。
私はこの指輪を嵌めたのだと想う。
次の瞬間、私は敷地の周りの道を歩いていた。
異様な指輪を左手の中指に嵌めて(左手全体に装着して)、道を歩いていた。そして、フェンスに沿うように敷地の端をパレードする異国の人々の列をフェンス越しに見入っていた。そのパレードの人々は何故か順々に私に向かって近づき、顔を間近で見るようにして過ぎていった。
そこで私は夢から覚めた………
[追記]
上には書かれていないが、フェンスで囲まれた敷地は実家の直ぐ近くの東へ二軒隣の中学校の敷地なのである。
龍の指輪を当ててしまったのは南西の角にある副門の手前のフェンス。
異様な指輪を見ていたのは中学校の敷地の大部分を占める運動場の中央辺り。そこで何かの台に置かれた異様な指輪を正座をしながら見ていたのだ。
異様な指輪を嵌めた後に、南西角の副門から出て中学校の敷地の外の道を北へ少しだけ移動していた時に、フェンス越しに敷地の中の端をパレードする異国の人々の列に出くわした。
奇妙なことはまだある。
龍の指輪を当ててしまったのは夕方だったと想う。そして異国の人々のパレードに出くわしたのも夕方だったと想う。しかしながら、その間の出来事である異様な指輪を見ていたのは日が完全に落ちている夜だったのだ。
龍の指輪をフェンスに当ててしまったシーンから異様な指輪を見ているシーンへの切り替わりと、異様な指輪を見ているシーンから異国の人々のパレードに出くわすシーンへの切り替わりは、唐突に切り替わったと認識している。
異様な指輪を見ていてそして身に付けている時間の流れと、夕方から日の落ちた夜そしてまた夕方という奇妙な時間の流れ。
その状況に戸惑いながら敷地の外の道を歩いていた時に、異国の人々のパレードというまた突拍子もないものと出くわしたのである。
それもその異国の人々は私のことを知っているように、順々に私に向かって近づき、顔を間近で見るようにして過ぎていったのである。
同じ道にいてパレードを見ていた他の何人かの人達には異国の人々は何の興味も示していなかったのである。