※この物語の以前の物語(The previous storys of this story)
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《物語(Story)》
【蒼い光(Blue Light)】
パイロットスフィアの中で、私の30倍以上ある物体が頭上を通り過ぎていくのを見上げた。
それは私のクローン。
惑星の昼の光を防御スキンに映して煌めきながら、私から遠ざかっていった。
私はこの惑星の制圧に失敗した。
クローンに乗り、一人、惑星の夜側で真夜中の首都に降り立った私は、背部ラックに装着した殲滅兵器で滅ぼしに掛かった。
都市全体の空間自体に潜む次元の根元エネルギー粒子そのものを空間から引き出し、そのエネルギーを中心に集中圧縮させることで一瞬で都市を丸ごと殲滅する。
そんなことが出来るのは、空間に満ちるエネルギー粒子、ダークマターをその強い思念で操り、更にクローンの思念により増幅可能な、我々、支配種族のみである。
エネルギーの引出、圧縮、そして首都の殲滅は上手くいった。だが、この種族を滅ぼすことは出来なかった。
首都は蒸発した。
しかし、その蒸発と伴に、私はクローンは上空に押し上げられた。
私は、何故かエネルギーが反射されるのを感じながら、凄い速度で舞い上がった。
そして、首都の地下に剥き出しになった、首都が総て入る程の皿の様なクリスタルを見た。
彼らは殲滅に備えていた。我々が滅ぼしに来ることを想定して、首都を犠牲に星を種族を護る仕掛けを備えていた。
私の降下を察知した彼らは、このクリスタルの下に避難したのだろう。もう一つの地下首都に。
凄まじい勢いでクローンは大気圏から押し出されながら、私の乗ったパイロットスフィアはクローンからもぎ取られる様に分断された。
パイロットスフィアはグルグル回りながら、惑星の重力井戸から放り出された。
私のクローンが頭上を過ぎていく。
夜の惑星の端に輝く朝の光を浴びながら、クローンはその皮膚を輝かせている。
反射のエネルギーを40mのその大きな身体で受け止めたクローンは、パイロットスフィアより大きな速度で飛び去っていく。
私は、クローンとの思念同調が消えていくのを感じながら、スフィアの回転を止める為に思念を集中した。
やがて、回転は収まり始め、そして、殆ど止まった。
クローンは微かな思念を残しながら、左上方で僅かに輝く。惑星は朝の光の部分を増して、私の下方に在った。
私は船を探した。
仲間は首都蒸発の後に私が飛ばされたことを把握しているだろう。
暫くして、仲間の猫型宇宙種族から、通信が入った。
「どうしたんだい、何が起こったんだ?」
『滅ぼすのは失敗したよ』
私は失敗したことに、安心して、頬を涙がつたった。
下方の惑星から無数の思念が、喜びの渦となって伝わってきた。
私は失敗して善かったのだ。
「さぁ、クローンを拾いに行くかい?」
『いや、やめとく』
「いいのか、怒られちまうぞ、母星に」
『いいんだ、もう乗りたくない』
『もう、滅ぼしたくないんだ、2度と』
「じゃあ、直ぐに君を拾ってやる。今、向かってるよ」
『あぁ、ありがとう』
船はパイロットスフィアを収容し、ハッチを開く前に私は涙を拭った。
仲間は4人皆で迎えてくれた。
誰も何も言わなかった。
私達は私の母星に向け船を出発させた。
私がどうなるかは解らなかった。
しかし、私の心は晴れていた。
母星の闇の向こう側に、何故か光が射す光景が心に浮かんだ。
清らかな蒼い光が射す光景が。
………それは、近い未来に出逢い、遥かなる時を賭けて魂もマインドも総てを捧げることとなる真実の星の姿であった………